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どのようにコンテンツを生み出し続けるか

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Content is king―― 

1996年にマイクロソフト創業者であるビルゲイツ氏のエッセーに登場した言葉です1。インターネット時代の到来を見据えて発せられたこの言葉は、良質なコンテンツを生み出すことの重要性を表現しています 

コンテンツの重要性はデジタルマーケティングの世界、特に検索エンジン最適化の取り組みである「SEO」の文脈でよく聞かれますが、これは何もデジタルに閉じたものではありません。 

同ブログの別記事では、マーケティングの本質は情報交換であることを述べました。この考えは、顧客に関する情報は、自社が提供する情報の有益性と等価交換でなくてはならないという「Give and Take」の思想に根ざしています 

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近年、日本においても、多くの企業が持続的な成長の解のひとつとして「マーケティング強化」に舵を切っています。当社(マーケットワンでも数多くのご相談をいただいていますが変革領域は従来の営業マーケティングという「ビジネスサイド」にとどまりません。 

研究開発部門など、これまではマーケティングとはほど遠いと思われていた部門が、イノベーションの創出を目指し、「自社シーズ × 顧客ニーズのマッチングを目的としてマーケティング手法を取り入れる傾向も顕著になってきました。 

既存領域を推し進める「深化」の取り組みに対して、こういった新規領域に向けた施策は「探索」の試みであるといわれています探索領域の重要性については、<前編>新規事業の創出で必要な「両利きの経営」をマーケティング視点で徹底解説でも解説しています。 

一方で、いざマーケティングを本格化する際に、企業が最初に直面する課題は「提供できるコンテンツがない「何が顧客にとって有益なコンテンツかがわからない」といったものでしょう。 

今回はマーケティングにおいて主役となる「コンテンツ」を生み出し続けるための方法について論考します。 

地域をまたいだコンテンツの再活用 

筆者自身、コンサルティングの現場でクライアントからコンテンツがないという相談を受けた際詳しく話を聞いてみると「なくはない」といえるケースも珍しくありません。 

例えば、マーケットワン・ジャパンはアメリカのボストンに本社を置く企業であるため、すでに海外オフィスで保有しているコンテンツの活用が可能です。 

実際に、【翻訳記事】マーケティングは営業チームが行うリードの「チェリーピッキング」にどのように対応するべきか?は本社の記事を日本の商習慣にマッチするように、調整・翻訳して公開したものです。このようなグローバルコンテンツの「ローカライズ」は多くの外資系企業がまず取り組んでいることでしょう。 

とはいえ「このようなスキームは日系企業では使えないのではないか?との疑問も持たれるかもしれません。 

しかし、少し見方を変えれば日系企業でも十分に応用可能ですし、筆者自身マーケティングに先行する多くの企業が取り組んでいる姿を目にしています 

まずは、本社よりも海外の現地法人で先にマーケティングに取り組んでいるケースです。「グローバルマーケティング」の取り組み自体は進んでいなくても、「グローバルビジネス」の取り組みが済んでいる場合、本社のある日本よりも、市場に近い現地法人の方がマーケティング施策を先行して行っているケースは往々にして存在します。 

そこで海外法人が活用しているコンテンツがあるのならば、逆に日本やその他の地域に展開できる可能性があります。例えば、海外の展示会に出展した際の資料などです。 

こういった形で自社が抱えるコンテンツを拾い上げていく上では、「使えるものが何か」と常にアンテナをはりながら、現地での取り組みを密に把握していなければなりません。コンテンツの再活用というキーワードについては、パナソニック コネクト株式会社の関口昭如氏をお招きした対談記事でも詳しく解説していますので、合わせてご参照ください。 

眠っている資産の再活用  

ニッチな製品」「顧客から見て価値がわかりづらい製品」などを扱っている場合、わかりやすい完成品を扱うビジネスに比べて、コンテンツ作りは相対的に難易度が高くなる傾向があります 

例えば、用途が限定的な製品バリューチェーンの上流を担う材料や部材などを扱う場合などです加えて、「新規のコンセプト」を扱う新規事業・新製品の場合も、顧客の顔が見えづらく、コンテンツ作成が難しくなる可能性もあるでしょう。 

このような企業がマーケティングに取り組む場合は、(特に初めてであれば)どのようなコンテンツを作成すればいいかについて悩むケースも多々あります。コンテンツの作成時には、内容の質そのものに加え、情報の粒度やコンバージョンの設定などさまざまな問題が噴出します 

こういった課題に直面した場合、重要なのは難しく考えすぎるのではなく、まずは広い視野で活用できるものがないか」と社内を探してみることです。 

例えば、社内プレゼンに使用した資料など、何かしら「コンテンツの材料」が存在しているケースは珍しくありません 

つまり、「マーケティングをしたい」と考えた時点で、さまざまな情報が社内に散らばっているだけで、「なくはない」と言えるのではないでしょうか。

ハードルを上げすぎることなく、まずは候補としてあげてみれば視野が広がり、アイディアが浮かぶ余地も生まれるでしょう 

もちろん、社内に眠っているすべてのコンテンツが使い物になるわけではありませんが、「すべてが使えないわけではない」ということは常に意識しておくと良いでしょう。 

「顧客視点」でコンテンツを作成する 

いずれの企業にも当てはまるのは0から1を作るというよりもまずは何か応用して使えないかから始めることがカギになるということです 

ただし、たとえコンテンツを作成したとしても「自社が想定する顧客」が興味のある内容であるとは限らない点については留意しましょう 

例えば、前述のように地域をまたいだコンテンツ活用をする場合、他の地域の文化がそのまま「該当地域の顧客」にあてはまるとは限りません。 

当社でもコンテンツのローカライズの際には、「そのまま翻訳をしても、マーケティングの文化が違うため通じない」という課題が発生します 

さらに、自社技術の紹介などを行う場合、あまりに克明なコンテンツを作成してしまうと肝心の顧客に内容を理解してもらえないどころか、「自分の業務との関連性がわからない」となる可能性すら発生するでしょう 

「顧客視点」はコンテンツ作成だけでなく、あらゆる営業の商談・マーケティング活動に当てはまることです。これを踏まえて、自分が紹介する技術や製品そのものの価値があるのではなく、あくまで「それが顧客の課題を解決すること」が価値であると捉えるのが適切といえます 

コンテンツの作成時にも、自社が想定する「顧客」とは誰なのか、どのような業務をしており、想定される課題は何なのか。そのような「顧客視点」の仮説をたて、素材となる“情報”を編集・再構築していく必要があります。 

まずは実行すること / コンテンツの評価の蓄積が重要 

マーケティングを進める上で重要なことは、「誰に(Who) × 何を(What) ×どのように伝えるか(How)」のバランスです。この3要素の内、どこかにミスマッチがあるだけで、顧客に届けたい情報が伝わらなくなります。 

同じプレゼンテーション資料を使用する場合でも、顧客側企業の社長と、その内容に習熟している担当者に対しては、違う説明の仕方をする必要があるのは明らかです 。

特にデジタルマーケティングでは顧客の反応がデータとして可視化できることから、訴求メッセージを少し、変えるだけでも閲覧数やコンバージョン率が大きく向上し得ます 

一方で、コンテンツマーケティングに関する知見がない状態のスタート時には、その反応は想定しづらいものです。 

それゆえ、「最初の一歩」を踏み出せずに社内で議論を続けてしまう光景をよく見ますが、まずは施策を進めながら顧客の声を聞く」ことも重要だと認識しましょう。そのコンテンツに興味があるのかどうか。その答えは顧客の反応を見てみるまではわかりません 

ここで大切なことは「事前の仮説を立て」「コンテンツの作成・公開後の効果検証をすることですたとえ、結果が出なかったとしても、仮説と結果のズレが認識できれば、それも立派な「自社の資産」となり、その意味では「成果」となり得るためです。 

コンテンツと真摯に向き合いながらも、自分の中でのハードルを上げすぎずに機動力高く発信を続ける。このバランスこそが、コンテンツを使ったマーケティング活動では重要なのです。 

 

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  1. https://kyrgyzstan.unfpa.org/sites/default/files/pub-pdf/content-is-king.pdf []