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【翻訳記事】マーケティングは営業チームが行うリードの「チェリーピッキング」にどのように対応するべきか?

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「マーケティングが渡したリードを営業がフォローしてくれない」

これはどの国でも問わず普遍的に起こる問題です。営業が自分の“対応したいリード”のみをフォローしてしまい、フォローされない大量のリードが残ってしまうといった問題をよく目にします。

こういった自分が好きなもの・得意なものだけをえり好みして選ぶことを英語では「チェリーピッキング」と呼びますが、どのように対応すればよいのでしょうか?

今回はMarketOne InternationalでリリースされたTackle sales teams ‘cherry picking’ leads and increase your ROMI on the spotをベースとして翻訳と一部加筆を加え、海外ではチェリーピッキンにどのように対応しているかについて、ケーススタディを解説します。

チェリーピッキングとは?なぜ問題なのか

営業やインサイドセールスの中でも、Webフォーム・資料ダウンロード経由で自社に問い合わせのあった“反響”に対応する組織機能は「SDR(Sales Development Representatives)」と呼ばれます。

SDRによる対応がなされる際には、自社に問い合わせがあった見込み顧客(リード)の中でも、よりコンバージョンしやすそうなリード“のみ”をフォローし、対応に工数がかかるリードはフォローをしないケースがしばしばあります。

そのような対応をとってしまうと、マーケティングROI、営業成績、データ収集にダメージを与えるばかりでなく、自社に対する一貫性のない顧客体験を生み出しかねないため、企業にとっては大きなリスクとなる可能性があります。

チェリーピッキングに対して「どこから手をつければよいのかわからない」といった実情もあるでしょう。

一方で、この問題に適切に対処すれば、すぐに結果につながる可能性があります。

そもそも、マーケティングの文脈におけるチェリーピッキングとは、営業がマーケティングクォリファイドリード(MQL)を把握した上で、職種や企業ランキング、所在地、業界、魅力的な社名、さらには「自分たちの好み」に応じて、最もコンバージョンが期待できそうなもの“だけ”を選んでフォローすることを指します。

この問題は、企業がAIを活用したリードスコアリング、ABM、セールス・アクセラレーション、MA(マーケティング・オートメーション)など、さまざまなデジタルマーケティングのツールやテクノロジーを駆使している場合でも起こり得ます。

チェリーピッキングによる問題の例

では、フォロー“すべき”リードではなく、フォロー“しやすい”リードのみに対応していくと、どのような問題が起こるのでしょうか?

その場合、ごく一部のリードしかフォローされず、ポテンシャルのあるリードであっても冷遇され、無視される可能性さえあります。このようなリード対応の偏在は、しばしば以下のような事態を招いてしまいかねません。

  • <各施策に対するマーケティングの投資対効果(ROMI)が見えづらくなる>
    多くのリードが未フォローのままでは「どのマーケティング施策が成果を上げ、どれがうまくいかなかったか?」を可視化することが非常に難しくなってしまいます。その結果、効果検証が不十分になったり、データの収集もうまくいかなくなったりするため、将来的なキャンペーンの最適化が難しくなります。
  • <収益機会の損失とそれにともなう営業のパフォーマンス低下>
    潜在的な可能性を秘めたまま放置された「ポテンシャル顧客」の中には、もしかすると大きな案件の芽があったかもしれません。
  • <営業とマーケティングの連携(セールス・マーケティングアライメント)の課題>
    両部門の連携が弱まると組織のサイロ化につながります。マーケティングが営業に対して質の高いリードを供給していたとしても、一部の営業にチェリーピッキングされたリード“以外”をアサインされた営業からは「マーケティングMQLの質が低い」と、不信感を感じさせてしまう可能性が発生します。その結果、マーケティングは、ネガティブなフィードバックばかりを受け取るため、不満を感じることもあるでしょう。
  • <チームのモラルの低下>
    営業チームのシニアメンバーが“上澄み”のリードを独り占めしていると判断されると、他のメンバーは難しいリードを残されたと感じ、チームの分裂、不満、フラストレーションにつながる可能性があります。
  • <カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)の低下>
    自社に対して興味を示しているものの、営業がフォローしていないリードがいる場合、おそらく「役職が低い」などの理由があるでしょう。しかし、その人たちが実は会社内で予算を持っている場合、待ちくたびれてしまい、競合他社に駆け込んでしまうかもしれません。

どうすればチェリーピッキングを防げるのか?

Pipedriveの調査「State of Sales Report, 2020-2021」1によると、回答者の半数以上(52%)が、「リードクオリフィケーション(リード量と質のバランスと担保)が営業担当者の最大の課題である」と回答しています。

このように自社のリード対応に抜け漏れがある中で、どのように対応すればよいでしょうか。以下に解決策のアイデアをあげてみます。

  1. まずはSDRチームがチェリーピッキングできないように“ハード”で仕組みを整えることが考えられます。例えば、SFA内で、システムリードを用いた自動のアサインルールの設定などがあたります。リード全体を意図的に見えないように制限し、担当者の業務量や製品知識、スキルセットをもとに管理者側で割り当ててしまうのです。
  2. SFAでの行動データを収集・分析することで、チェリーピッキングの原因を特定することも可能です。例えば、チームメンバーがリードをアサインされてから「良いリードでない」とフラグ付けするまでの時間を図れば、“実際の”フォロー状況を測れるかもしれません。
  3. SDRチーム機能自体を「アウトソースする」ことも選択肢の一つです。むしろ、本質的にはそれをしようとしまいと、アウトソースするときと同じように業務プロセスを標準化することが重要といえます。Eメールナーチャリング、テレクオリフィケーション、データ分析などを統合し、全社合意された営業リード(Sales Accepted Lead)を定義化することで、営業チームが動ける状態にするのです。こうすることで、営業とマーケティングの連携が可能になり、リード判定に厳密さをもたらすことができるようになります。
  4. マーケティングとセールスの間でSLAを導入することも重要です。SLAは「Service Level Agreement」の略で、契約文化の強い海外では部門間連携をする際に、書面でルールの合意をとるケースが多くあります。
    チェリーピッキングを防ぐためには、SLAの定義に基づき、リードに対して「案件化しない」と判断するまでの、メールや電話のタッチ数などを決めることが重要です。
    営業とマーケティングは「リード(MQL)の定義」「MQLを受け取ってから何日以内に対応するか」などのプロセス。さらに、MQLに対してマーケティングがどのように営業をサポートし、営業が対応していくかについて合意しておかなければなりません。
  5. リードマネジメントフロー(リード対応のプロセス定義)において、リードを“却下する理由”の詳細を明記することも大切です。これにより、「なぜダメだったのか」のインサイトが可視化されるため、営業チーム・マーケティングチーム間で、将来的な改善に向けた、より建設的な議論が可能になります。
    もし、営業が「承認」「却下」しか提供せず、その理由がわからなければ、組織としての学びは何もありません。そして、チェリーピッキングが発生し続ける原因になります。

以上が、チェリーピッキングへのケーススタディです。

しかし、上記を実行しても必ずしも改善にはつながるとは言い切れません。それはチェリーピッキングの根本的な原因は、営業とマーケティングの連携不足にあるためです。

SLAは理論的には有用ですが、現実には無視されるケースは珍しくありません。

例えば、マーケティングは営業に対して、「これがベストプラクティスであり、データ上も5つのタッチポイントを持つ場合の商談成功率が高い」といった説明は可能です。

ただしこれは、営業がマーケティングの立てた計画に納得し、その結果が十分にフィードバックできるPDCAプロセスと合意がある場合にのみ機能します。

LinkedInの調査2によると、営業とマーケティングのリーダーの87%は、「営業とマーケティングのコラボレーションがビジネス成長にとって重要である」と述べています。

内部連携の強化により、組織間のサイロ化を解消し、摩擦のないコミュニケーションをとることで、バイヤーエクスペリエンスを向上させる。そうすれば、「顧客中心」の組織文化を生み出せます。

営業チームが、マーケティングキャンペーンの戦略を十分に理解していないことも往々にしてあります。そのような状況下でも、「成功する」インサイドセールス体制の構築には何が必要?の記事にあるとおり、営業とマーケティングの中間に位置するSDR(インサイドセールス)チームがきちんと両者の考えを理解し、ときにそのギャップを埋めることも重要となります。

 

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