Inside Sales

どのようにして若手人材に電話営業へのコミットをしてもらうべきか?

インサイト一覧

2030年問題」に代表されるように、2023年現在の日本では今後の労働力不足がさまざまな業界で取り沙汰されています。それを受けて、デジタルツールを使ったDXの波は日本の伝統的な大企業にも着実に迫っており、本ブログではたびたび日本企業におけるDXのあるべき論を解説してきました。 

一方で、いまだに電話営業はほとんどの企業で重要な立ち位置を占めているのも事実です。電話営業は「ただアポを取ればいい」というわけではなく、遠隔にいながらも見込み顧客のニーズを取得しつつ、自社に興味関心を持ってもらうという営業スキルが求められます。 

オフィスにいながら顧客にアプローチできる電話営業は、顧客接点を増やすことができ、数多くの経験を積むことができるため、新卒社員のトレーニングとしても最適となります。そのため、自社に入社した社員に経験を積ませる意図でアサインするケースも多々あるでしょう。 

しかし、デジタルネイティブと呼ばれるZ世代の若い年代は、電話でのやり取りに慣れていない場合も多く、「思ったように前のめりに取り組んでくれない」という声もたびたび聞かれます。 

そこで今回は、実際にクライアント企業にインサイドセールス内製化のアドバイザリーを行なっている筆者の知見を活かし、営業の基本となる電話営業を、どのように若手人材に浸透させるべきかを論考します。 

BtoB企業における電話営業の立ち位置 

まず、BtoB企業内における電話営業の立ち位置を整理しましょう。一般的に、日本のBtoB企業は対面の商談や電子メールに加えて、電話を主要なコミュニケーションツールとして活用しています。 

近年はデジタルツールを併用するケースも増えてきましたが、それでも架電で得られる情報量は多いため、依然として主流な営業手法の1つとなっています。 

電話でのやり取りなら、相手の声のトーンや反応を直接感じ取ることができるため、見込み顧客と人間関係を築く上で有効な手段であり、仮説に基づいた情報の等価交換により、相手が抱えている潜在的なニーズを引き出せます。 

営業の基本的なスキルに加え、社会人としての言葉遣いやマナーなどを学ぶのに非常に適しているという観点から、入社した新卒社員が取り組む業務として、電話対応業務を任せる企業も多いことでしょう。 

特に営業部門ではキャリアパスとして、「まずはインサイドセールスで電話営業を経験し、その上でフィールドセールスに転向する」といった体制をとっている企業も見受けられます。 

厳密には、インサイドセールスの業務は電話営業に限らず、顧客との情報交換の目的もマーケティング・営業とは異なるのですが、新卒社員が顧客とのやり取りに関する勘所を養えるのは事実です。 

インサイドセールスで相互交換するべき情報の特徴については、本ブログのBtoB企業におけるインサイドセールスのあるべき役割とは?で解説していますので、あわせて参照してください。 

電話営業は対面営業の基礎スキル強化にも繋がる 

電話営業というのは、営業のスキルアップや考え方を身に着けるために適した業務です。営業として必要な考え方はさまざまでが、多くの企業にとって共通する内容として、以下のものが挙げられます。 

  • 自社や商材を魅力的に伝える提案力 
  • 価格やサービス内容、納期などを調整する交渉力 
  • 相手の求めている内容や課題について想定する仮説構築能力 

しかし、これを「対面営業」「電話営業」に分解して考えると、求められるスキルはやや異なってきます。 

対面営業では、自社や自身についてある程度知っている相手に対して、更なる興味や関心を持たせる必要があり、魅力的に伝えるために資料や身振りなど、発話以外のコミュニケーション手段を活用する必要があります。 

加えて、相手の仕草や表情から興味度合いや反応を読み取るスキルも大切です。 

それに対して電話営業では、見ず知らずの顧客に対して、自社や製品を限られた時間で簡潔に説明することが求められます。 

会話でのやり取りのみで相手に説明することに加え、柔軟に相手の反応から興味度合いも読み取る必要があります。 

電話営業のようなテレ(遠隔)によるアプローチでは、顧客内インサイトをしっかりと取得するため、コールする側が「顧客の抱える課題やニーズ」をしっかりと想定する。その上で、相手にとって役立つ情報を提供する意識が求められます。 

このように、マーケティング・インサイドセールスからパスされたリードにアプローチする対面営業と、浅い関係から架電する電話営業では求められるスキルは異なる部分があるのです。 

とはいえ、「自社や商材をどう伝えるのか」「相手が何に興味があるのか」という根底部分は共通しています。そのため、電話営業に取り組むことで、対面営業でも必要な基礎部分の考え方は身に着けられるでしょう。 

若手人材が電話営業に抱くネガティブな印象 

筆者は「新卒社員や若手人材が、なかなか電話営業に取り組んでくれない」といった相談を、クライアント企業の担当者から受けるケースを数多く経験しています。 

そういったご相談に対して、「なぜ取り組めていないのか」のクエスチョンを投げかけると「(若手が)商談の資料作成に時間がかかる」「商材の勉強で電話営業に時間が割けない」「どのくらいの時間を割けばいいのか分からない」といった回答が返ってきます。 

しかし、筆者はこれらの理由が電話営業に取り組めない根本的な原因でないと考えています。 

もちろん、あらゆるケースに当てはまるものでもありませんが、根本的な理由としては、そもそも若い世代の「電話営業をやりたくない」というネガティブな感情に起因しています。 

では、なぜネガティブな印象が生まれるのでしょうか。要因の1つとして「電話で知らない人と話す機会や経験が少なくなっている」ことがあげられます。総務省が公表している『令和4年通信利用動向調査の結果』にもあるように。固定電話を保有している世代は減少しており、個人のスマートフォンの利用率が高まっています1 

このことから、友人・知人と電話で話す機会はあっても、知らない人と電話で話すという機会や経験が少なくなっていると推察されます。 

実際に、株式会社manebiZ世代を対象に行った調査では、42.7%の若い世代が苦手なビジネスマナーとして「電話対応」をあげており、全体で最も高い割合だったと判明しています2 

このように、若い世代は面識のない人と電話で話をするという電話営業においても非常に抵抗を感じる傾向があり、実際に「テレハラと」いう言葉があるように、電話営業に対しても世代間でギャップが生じているのです。 

仕組み化により電話営業へのコミットメントを促す 

人の感情や価値観といったものは、外部の人間が変えるのは非常に難しいものです。では、どのようにして若手人材に電話営業へと向き合ってもらえばよいのでしょうか。 

筆者がクライアントに対してよく行う提案は「やれない理由を運用や仕組みでひとつずつ解消していく」というものです。 

例えば、以下のような方法が挙げられます。 

  1. 電話営業の時間・場所を指定し、それ以外の業務はいったん止めてもらう。 
  2. 評価のポイントを架電件数に置く。 
  3. 12を、複数人のグループで同じ時間・同じ場所でおこなう。 

なお、評価基準として「アポイントの取得件数」「商談貢献金額などの指標」を設定するケースがあると思われますが、それだけでは、先が見えにくく、成果が出にくくなることが懸念されます。 

中間指標として「担当者と会話した回数」「架電した件数」を設けることも大切です。 

実際に、筆者が担当したA社では、アポイント件数を目標値に設定していましたが、「どの程度電話営業に時間がかかるのか」などが見えにくくなり、思ったほど成果に繋がらない状況に陥っていました。 

A 社のケースでは、「アポイントを1件取得するのに5件は担当者へのコールが必要→担当者と1件話すには7回のコールが必要」というように、目的から必要な架電数を導き出し、電話営業で必要な架電数・時間を「見える化」したことで、成果が出るようになっています。 

もちろん、前述したように、電話営業においてはコールする前の仮設構築やそのための準備が重要であるため、ただ必要コール数を割り出しただけでは不十分です。 

とはいえ、いくら良い仮説を立てたとしても、実際に電話口で上手く話せなければ意味がないでしょう。若手人材の場合、「まずは電話営業に慣れる」ということが最優先であり、そのためには架電数を増やすしかありません。 

それを踏まえて、「架電前の準備に時間をかけたい」といわれたとしても、事前の準備の重要性は認めつつも、電話営業に慣れてもらうため、架電数をKPIにおいて取り組んでもらうことが必要です。 

初期段階は仮説や資料作成はマネジメントが巻き取りつつ、電話営業に慣れてきた段階で、事前準備の質に関しても評価に組み込んでいくことで、各メンバーの成長フェーズに合わせた電話営業スキルの醸成を行えます。  

おわりに 

電話営業に対するネガティブな印象が原因でなかなか取り組めない若手人材に対しては、「まずは電話に慣れる」ことで、ある程度は架電でのアプローチに対する姿勢は変化していくでしょう。 

とはいえ、根本部分にある負の感情までは変えられないのも事実です。そのため、マネジメント側としては「電話営業を通じて、営業に必要なスキルが身につく」と、メンバーに理解してもらえるよう務めることが大切です。 

短期的には架電件数を評価する環境を整備し、コミットメントの強化を促す。長期的には今後の営業に必要なスキルが身に付き、キャリアパスにとって意義深い業務であるとメンバー間で共有する。若手に電話営業を取り組んでもらうためには、短期的・長期的な取り組みが重要になります。

メールマガジン登録

  1. 総務省令和4年通信利用動向調査の結果https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/230529_1.pdf []
  2. HRzineZ世代に聞いたビジネスマナーに対する意識調査を発表、苦手最多は電話対応manebihttps://hrzine.jp/article/detail/4035 []