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【挑戦の舞台裏】NEC:営業モデル変革を浸透させる ― デジタルセールス推進者会議の先に見据える未来

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近年、営業変革の一手としてデジタルセールスに着目し、取り組む企業が増加している。日本電気株式会社(以下、NEC)では、2020年より自社グループ向けにデジタルセールス推進者会議を開催。啓発からナレッジ共有を行う場として運営されてきた。2024年2月27日に実施された第13回会議には、社外のナレッジ共有役としてマーケットワン・ジャパンも登壇。経営課題を起点とし、改善を重ねながら進化し続ける同会議と、デジタルセールスを活かした新たな可能性について、本会議の企画・運営を担うNECのお二人にお話を伺った。

プロフィール

NEC マーケティングストラテジー&オペレーションズ統括部
デジタルセールス戦略グループ プロフェッショナル 野崎 秀造 氏
NECに入社後、基幹システム開発プロジェクトにSEとして従事。その後、プラットフォーム商材の販売促進、デジタルマーケティング・インサイドセールスの実務および管理者を経て、セールスイネーブルメントチームリーダーとして、デジタルセールスのナレッジセンター、育成プログラム企画・運営を統括。

同部 デジタルセールス戦略グループ 主任 尾留川 祐士 氏
NECに入社後、製造業向け営業を経て、GTM戦略統括部(現マーケティングストラテジー&オペレーションズ統括部)に異動。以来、デジタルセールスナレッジ基盤やデジタルセールス推進者会議の企画・運営を担当。

マーケットワン・ジャパン合同会社 テレサービス本部長 鈴木 竜一
MarketOne Internationalグループの東アジア地域テレサービス運営を統括。2008年に同社入社以来、一貫してテクノロジ企業・製造業向けの案件醸成型ABM支援の現場に携わり、テレプロスペクティング関連のサービス開発・組織運営を指揮。成果の最大化から逆算したプロジェクト設計を行うプロフェッショナル。

コロナ禍を契機にデジタルセールス活用にシフト

営業活動を変革する一手として、デジタルセールスの導入や推進に対する関心が高まっている。その一方で、いかに活用するか、どのように現場に浸透させるかという点は、多くの企業において模索を続けているのが実情だ。NECではコロナ禍を契機に、セールスとマーケティングの連携強化を図る「営業DX」を推進してきた。その施策の一つとして定期開催している社内向けの取り組みが「デジタルセールス推進者会議」である。

野崎「第1回は2020年9月に開催されました。コロナ禍によって、それまで個々の現場担当者が当たり前に行ってきたお客様との対面の営業活動ができなくなったことを契機に、お客様とのリモート面談を含めた営業のデジタル活用のナレッジ共有の場を設けることになったんです。その背景には、当時の社会情勢に対応しながら営業活動を継続するため、組織課題におけるDXやデジタルセールス活用の優先順位がおのずと上がってきたという事情がありました」

どの部門にも、個々のスキルやノウハウがあることはわかっていた。ただ、現場では「普通にやっているだけ」「特別なことはしていない」という意識が強く、なかなか“共有”に至らない。散在している知見を全社のナレッジに昇華させるために、全社横断的に知見を共有する場としてデジタルセールス推進者会議が始まった。

失敗にも価値がある ナレッジ共有でより強いセールスへ

2024年2月には、デジタルセールス推進者会議は第13回を迎えた。増減はありながらも参加者は着実に増えていて、この数回の参加者は約250名に上った。根底にある共通テーマは「事例共有」だが、参加者には「成功事例だけではなく、失敗事例やそこから見えてくる課題も赤裸々に話してほしい」と依頼をしている。

尾留川「私が以前に所属していた部門では、失敗からの学びを共有する場があったんです。現場では、失敗から多くの学びを得られるというマインドが根づいていましたし、新しいことに挑戦するなら失敗がつきものだという認識も、全社的に浸透していると思います」

加えて、現場にあるベストプラクティスを、個別に閉じて共有しないのはもったいないことでもある。デジタルセールスはマーケットや商材が変わっても共通するプロセスが多いため、他部門からの共有には多くの学びがあるはずだ。

野崎「私自身、運営サイドに来る前はリスナーとしてデジタルセールス推進者会議に参加していました。定期的に発表を聞いていると、取り組みの積み重ねによって課題がレベルアップしていくことがわかります。先進的な事例発表を聞くと、『同じ社内でもこんなに進んでいる部署があるんだ』と、良い刺激になることが、身を以てわかっているんです」

現場に立つ営業担当を巻き込み、自分ごと化を

一方で、本当に情報を届けたい対象まで巻き込めているか、ナレッジの共有が事業に貢献するレベルにまで至っているかという点では、なお難しさを感じる面があると二人は言う。

尾留川「『自分には、デジタルセールスは関係ない』と感じている人にこそ、意義や価値を理解したうえで会議に参加してほしいと思っているんです。そんな方々に、実際の営業活動でもデジタルセールスを実用してもらうのが理想であるとすると、まだ道半ばかもしれませんね」

そもそも、「参加者が増えた、よかったね」で終わらせてしまっては本末転倒だ。

野崎「会議で得た新たな気づきが、各現場の業務でどんな貢献をしていくのか、どんな改善につながるのかを可視化するのには、難しさを感じています。特に当社では、2022年頃から『事業に貢献するマーケティング』を目指しており、ROIの観点での効果測定なども取り組んでいきたい課題になっています」

だからこそ、特に重視しているターゲットは営業部門だそうだ。

尾留川「NECの場合、営業部門は製造、流通、金融、公共などのマーケット軸で分かれていて、それぞれの中に独立してデジタルセールスやデジタルマーケティングを担う部門あります。各部門の取り組みを可視化しやすくすることも、本会議の狙いの一つですが、デジタルセールスの先にいる、いわゆる営業も巻き込み、お互いの活動を理解することを目的に据えています」

最終的なフォーカスが“デジタルセールスの先にある受注”であることにもブレがない。

尾留川「どんなに先進的なデジタルマーケティングやインサイドセールスができても、そこから受注や売上に直接つながるわけではありません。NECのビジネスにおいては、やはり営業と連携して提案から契約までつなげなければ意味がない。しかも『リードがあるからよろしく』と渡すだけでは不十分で、結局のところ、営業部隊にデジタルセールスの価値を適切に理解してもらい、早期の段階から連携する必要性を痛感しています」

社内への情報共有という点ではいくつかの手段があるが、その中でもデジタルセールス推進者会議は、ストーリー立てて活動内容を共有する場としての役割を果たしている。

アクションを呼び起こすラーニング事例を伝える

2024年2月27日に開催された第13回デジタルセールス推進者会議は、「施策実行:デジタルマーケティング/インサイドセールス施策の事例共有(成功例/失敗例 等)」というメインテーマで行われた。サブテーマは「顧客深耕(ABM等)を中心とした事例・ナレッジ共有」だ。

尾留川「現在、NECではお客様に対してしっかりとリレーションをつくり、プレゼンスとロイヤリティを高めていくという全体的な動きがあります。その点で、顧客深耕型ABMのアプローチは営業活動とも連動した非常に有効な手段だと改めて感じていたんです。従来のNECでは、新しい領域を開拓するには営業担当が人脈をたどっていくというやり方が正攻法でしたから」

それに対し、Webの情報からインサイドセールスで掘り起こし、リレーションをつくったうえで商談化につなげるという新しい手法に、マーケットワンの伴走のもとで取り組み始めます。

尾留川「NECにとって非常に効率的かつ先進的なアプローチだったので、ぜひ事例として紹介したかったんです。特に、当社のあるマーケット担当営業部門に対するマーケットワンさんのご支援を拝見し、効果的な取り組みであると感じたことも、今回の会議でぜひお話しいただきたいと思った一因でした」

野崎「それから、今でも営業活動とデジタルセールスはまったくの別物として、切り離して捉えられることは少なくありません。ABMのように、営業活動の本丸において、マーケティングと連携しながら顧客深耕を図る手段があることを、まずは理解してもらいたいと考えて今回のテーマを設定するに至りました」

こうした流れに加えて「社外の事例や動向も知りたい」という参加者のニーズもあり、以前からNECの各部門とリレーションを築き、サービス提供するパートナーとして伴走してきたマーケットワンに声を掛けていただく運びとなった。

鈴木「マーケットワンとしては、参加される営業やデジタルセールスに携わる方々にとって、知見や視野を広げる一助となる機会にしたいと意識していました。そもそも当社のサービスはお客様に伴走していくものなので、正攻法のベストプラクティスってあまりないんです。デジタルセールスというとスマートなアプローチに思われることもありますが、実はかなり泥くさい面があり、お客様にしがみつきながら取り組んでいるリアリティをお伝えしよう、と考えました」

日々の現場にあるのは、成功ばかりではない。失敗をも含めたリアルな実感をともなう声を聞きたい、というNECのニーズには、マーケットワンとしても深い共感があった。

鈴木「腹落ちして自分ごと化したり、すぐに実行できるヒントにしたりするのに必要なのは失敗、言い換えれば“ラーニング”だと考えています。何かしら挑戦してみたからこそラーニングが生まれ、足りない部分が見えてくるからです。成功事例も大切ですが、ラーニングの事例こそ、誰もがすぐに動き出しやすい原動力になると思います」

デジタルセールスの理解と実践、両方の浸透を目指して

今回の推進者会議のみならず、数々のサービス提供を通して見えてきたNECの特徴とはどんなものだろうか。

鈴木「NECさんは横展開を重視される会社だと思います。知見やノウハウをため込むだけでなく、他部門にも広く伝えようという意志は、プロジェクトでご一緒する時にもたびたび感じました。デジタルセールスのように新しく出てきた手段も、積極的に取り込んでいこうとする意識が強いですよね」

マーケットワン・ジャパン合同会社 テレサービス本部長 鈴木 竜一

もう一つ、特徴的だと感じたのは組織の在り方だと鈴木は言う。

鈴木「NECさんのような企業規模で、管理職や役員の方がプロジェクトの現場レベルにまでしっかりコミットされているのはとても印象的でした。もちろん、現場に一任する成果主義にも良さはありますが、新たな挑戦には失敗がつきものですから、現場レベルで解決しきれない課題が頻発します。その点、経営層の方が一緒に動いてくれれば、現場の皆さんはとても心強いでしょう。今回の推進者会議を通して、改めてNECさんのスタンス、強みを垣間見ることができました」

開催を重ねながら進化を続けるデジタルセールス推進者会議。今後のビジョンについても伺った。

尾留川「最終目標は、NECの中でデジタルセールスそのものをしっかりと浸透させていくことです。データを活用することで、お客様の必要なタイミングで必要な情報を提供できたり、属人的だったノウハウを幅広く展開できたりと、デジタルセールス次第でお客様への提供価値はまだまだ大きくできます。その実現に向けて、デジタルセールス推進者会議をはじめ、ナレッジの共有や周知をさらに進めていきたいです」

推進者会議をはじめとする手段を磨きつつ、その先にある目的達成、事業への貢献を見据えた活動を継続していく。最近では会議以外にもポータルサイトや、Teamsを活用した推進者コミュニティサイトも立ち上げた。さらに研修プログラムを通して、デジタルセールスの推進者育成にも力を入れているという。

野崎「今後は、社外に目を向けていく取り組みにも挑戦したいと考えています。当社より先進的な企業もあれば、おそらくその逆もあって、意外と悩みや課題は共通しているでしょう。我々の知見を外部のお客様に展開すれば事業に貢献できる可能性もあるので、営業担当やパートナーと連携し、社外に対する価値を生み出していく道も探っていきたいです」

マーケットワンも、NECとの今後について意欲を語った。

鈴木「小さな成功を積み上げて次につなげるのは、当社が得意とする分野。NECの皆さんと同じ目線で、成功事例を生み出すためのお手伝いに力を尽くしていきたいです。一方で、NECさんにとって本質的なゴールというのは、我々のサポートが必要なくなる状態だろうとも思っています。逆説的ではありますが『ありがとう、もう必要ないです』と言われる時まで、全力で伴走させていただきます」

NECが目指す営業モデルの変革の実現に向け、マーケットワンは今後もパートナーとして伴走していく。

 

Text:Aki Kuroda
Photo:Takumi Hatano
Edit:Tomoko Hatano