Inside Sales

両利きの経営における「探索領域」への取り組みを成功させるポイント

インサイト一覧

VUCA時代が到来したといわれて久しい昨今ですが、特に当記事を執筆している2022年はロシアのウクライナ侵攻を皮切りに、世界的なインフレ率の上昇、歴史的な円安など、まさに激動の一年でした。 

このような状況において、ビジネスを取り巻く環境も急激に変化しています。それを受けて、多くの企業が主力製品・サービスで安定的に売り上げを伸ばしていくという方針から、新規事業の開発や新規市場への参入を模索し始めているように見受けられます。 

特定の事業で成功した企業が、持続性のある成長を続けるためには、「既存事業」「新規事業」を共存させる「両利きの経営」が必要です。 

同ブログの両利きの経営について述べた記事の前編後編にわたって解説したとおり、両利きの経営ではとりわけ新しい事業を開拓する「知の探索」領域が重要視されます。 

一方で、「実際にどのように手をつけていいのかわからない」という声がよく聞かれるのもまた事実です。そこで今回は、探索領域での取り組みを推進するうえで必要な要素について、マーケティングの視点から解説します。 

 

自社が保有する“知(=情報)”の棚卸し 

オライリー ,タッシュマン 共著の『両利きの経営』では、「知の探索(Exploration)」は、新しい事業を考案するために自社の既存領域の枠を超えて、遠くに認知を広げていこうとする行為であると定義されています1 

自社が持っている技術や知見を新たにビジネスに昇華させるためには、従来は関わりのなかった業界や部門にアプローチし、相手が持っている課題やニーズに目を向けなければなりません。 

はじめてアプローチする相手のインサイトを聞き出そうとすれば、前提として「自社が持つどのような価値で訴求できるのか」も把握しておく必要があります。 

それを踏まえると、知の探索領域で最初に求められるのは「自社が持っている技術や知見といった知(=情報)の棚卸し」といえるでしょう。つまり、自社が保有している製品・ソリューションから、探索活動の対象を探し出す活動がファーストステップとなるのです。 

ここで棚卸しの対象となるのは有形の資産だけに留まらず、製造業などの場合は無形の「特許技術」も含まれます。 

実際、日本の特許保有数は中国、アメリカに次ぐ世界第三位に位置していますので、これは大きな強みといえます(ただし、経済産業省特許庁が2021年に発表した『特許行政年次報告書』によると、日本国特許庁への特許出願件数は2020年には減少傾向にあるとのことです)2 3  

ビジネスのグローバル化が進む中で、国内外での知財戦略が重要視されていることも合わせると、製品化していなくても、自社が保有する技術やその特許も探索活動の対象になり得るといえます。 

この場合、社内で特許情報を洗い出したうえで、セカンドステップとして「探索」活動の対象となる候補を絞り込む……、という手順を踏みます。ここで重要なのは、「どの技術をビジネス化したいのか」について、研究開発部門だけでなく、事業部門や経営層からもコンセンサスを得ることです。 

新規事業の開発担当部門が“ハブ”となり、「各技術を熟知している研究開発部門」「顧客ニーズや売り方を熟知している事業部門」「市場の動向や社内事情など複合的な観点で判断している経営層」の理解を得ながら進める必要があります。 

これこそが、すぐに売上が上昇するといった“わかりやすい”結果が出づらい「探索」活動における成功のカギです。 

 

探索活動の指針となる「イノベーションストリームの四象限」 

さて、自社技術の棚卸しをおこない、注力する技術を社内の利害関係者との話し合いで決定すれば、次は仮説立案フェーズへと進みます。 

この際、やみくもに個々に自社技術の仮説立案をするのではなく、前述した『両利きの経営』の中で紹介されている、「イノベーションストリームの四象限」に自社技術をあてはめる。その、市場と組織能力を基に、二軸で考察することが重要です。 

両利きの経営における「探索領域」への取り組みを成功させるポイント

イノベーションストリームの四象限の考え方は、新規事業開発(イノベーション)を起こす際には、「新しい組織能力を作りだす必要がある場合」「新しい市場や顧客へ売り込む仕組みをつくる必要がある場合」の二軸を想定するため、各技術からビジネス化する仮説を考える際に重要な示唆を与えてくれます。 

上図に棚卸しをおこなった知をあてはめることで、「ターゲット市場の分析が必要なのか」「自社が提供できるサービス形態を模索すべきか」「新たなビジネスモデルの構築に注力するべきなのか」など、探索活動の方向性を考える指標にもなります。 

 

探索領域の実行フェーズで想定される課題と打開策 

「①自社技術の棚卸し→②注力技術の選出→③イノベーションストリームに基づいた各技術のビジネス化仮説の立案」のフェーズを経た後は、実際に策定した仮説が正しいのか検証しなければなりません。 

では、仮説の検証活動では、「誰が」「何を」「どのように」進めていけば良いのでしょうか。 

以下より、新規市場調査の実行フェーズで想定される課題と、マーケットワンのアウトバウンドコールでの知見を踏まえた打開策を説明します。 

   1. 新規市場や新規顧客に対するナレッジの不足 

イノベーションストリームの四象限の項で示したとおり、イノベーションを起こす際には新市場や新規顧客に視野を広げていかなければなりません。 

しかし、日本の製造業では、(事業部門や営業部門でさえ)今まで付き合いのなかった市場や顧客に対するナレッジ・コネクションを十分に持ち合わせていないケースがほとんどです。 

新規市場や新規顧客といっても、「ターゲティングすべき企業群はどこか」「どの部門のどのようなミッションを持っている人がライトパーソンか」を判断するためには、自社にはない知識と経験が必要になるケースもあります。 

そういった自社にとって未知の領域に対する、初期段階の効果的なアプローチ方法として「アウトバウンドコール」が挙げられます。 

BtoBマーケティングにおけるアウトバウンドコールは、ターゲティングすべき企業やライトパーソンを事前に定義したうえで、ターゲット企業やライトパーソンが抱えていると予測される課題にあったシナリオを構築します。 

このシナリオ構築は、探索活動の初期段階にあたる「ニーズ調査のフェーズ」において、非常に重要な役割を果たします。 

「自社の技術で何ができるか」だけでなく、顧客視点で「どのようなメリットを相手に与えられるのか」を考えることが、効果的なニーズヒアリングを成功させるポイントです。シナリオ構築をおろそかにすると、調査領域に関して得られる情報が希薄になるだけではなく、自社のイメージを毀損する可能性すらあります。 

    2. 新領域におけるニーズ調査のリソース不足 

実際のところ、新規の探索領域において、十分な知見や人的リソースを確保している日本企業は少数派でしょう。 

特に、新規事業の開発部門として立ち上がったばかりであったり、知財部門の一業務として新規探索をおこなったりする場合は、知見や人的リソースが不足している中、“手探り状態”で新規探索の方法を模索しているケースは多々あるはずです。 

従来、自社が取引をしていなかった業界にアプローチする際には、業界ごとの“作法”や各部署が持っている潜在的な課題などを念頭に置かなければなりません。 

フォローするリソースが限られていることを理由に、調査対象を狭めないことも大切です。できるだけ多くのニーズを調査し、十分なサンプル数の中から結果を分析する必要があります。 

加えて、顧客接点を構築後に、実際に顧客とのリレーションを深めたり、詳細な内容を商談の中で詰めたりするためのリソースも確保しておかなければなりません。以上を踏まえると、現実的には数多くのターゲット企業の調査を既存リソースで賄うのは難しいでしょう。 

探索領域への取り組みでは、目に見える形で売り上げとしての数字が上がるまでには時間がかかります。そのため、単年のKPIを抱える既存事業や営業部門に協力を依頼できる範囲は限られてくるのではないでしょうか。 

そのような場合は、グループ企業・パートナー企業、外部専門家などの、自社チャネル以外への協力依頼も検討されます。 

これらアウトソースに関しては、自社内の知見が蓄積されにくくなるデメリットも確かに存在します。一方で、これらを組み合わせない限り前に進めないのであれば、総合的に見れば合理的な判断になるでしょう。 

 

おわりに 

「両利きの経営」における探索活動の重要性は、実のところ誰しも感じていることだと思います。しかし、実際に専門チームを立ち上げ、プロジェクトが動き始めると、自社内の知見では補いきれないさまざまな課題が発生し、八方塞がりになっているケースも珍しくありません。 

マーケットワンは、探索領域のコンサルティングやアウトバウンドコールを数多く手がけ、お客様企業とパートナーシップを形成したうえで、併走するサービスを提供しています。 

詳細は下記となりますので、探索領域における調査活動で課題をお抱えの方は、ぜひお問い合わせください。 

お問い合わせはこちら

メールマガジン登録

 

  1. チャールズ・A. オライリー , マイケル・L. タッシュマン  「両利きの経営」 東洋経済新報社 20192 []
  2.  経済産業省 特許庁「特許行政年次報告書2021 []
  3. WIPOInnovative Activity Overcomes Pandemic Disruption – WIPO’s Global Intellectual Property Filing Services Reach Record Levels []