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マーケティング起点の企業変革で必須となる「変革ビジョンの具現化」とは?

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ーケットワン・ジャパンが企画・共催したBtoBマーケティングフォーラム」が20219月1415日の計2日間に渡開催されました。テーマは「“三方をよし”を実現する価値創造企業への道のり ~全社を巻き込む、コーポレート・トランスフォーメーション(CX)への挑戦~」。BtoB事業を行う企業において、新たな価値創造を実現するために、マーケティングが社内外に果たせる役割や機能とは何かを考察しました。 

今回は、この講演会に登壇した弊社のシニアディレクター大橋 慶太の講演内容を記事にまとめましたので、ぜひご一読ください。 

また、当日の講演資料は以下よりダウンロードいただけます。 

マーケティング起点のコーポレート・トランスフォーメーション ~ 全社を巻き込めるかどうかの差はどこで生まれるのか ~

  

はじめに 

どのような形であれ、多くの社内ステークホルダーを効果的に巻き込むことでしか企業変革の実現・浸透はできません。 

既存の領域を守っていく「深化の領域」と、新しいやり方や事業に挑戦する「探索の領域」を同時にバランスよく進めて行くことが重要である「両利きの経営」の考え方があります。企業変革の視点で考えた場合、ほとんどが何らかの意味で新しい事柄、やり方に挑戦する探索の領域にあたるでしょう。  

一般的には以下のように、探索と深化の領域で求められるものはそれぞれ大きく異なります。 

 

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大企業と呼ばれる歴史ある企業は、創業時の探索的な事業展開から始まり、その後の自社の強みを形作る深化の領域で成功している場合がほとんどでしょう。つまり、社内の多くのステークホルダーが深化の領域に携わっている状態と言えます。 

この深化領域の主流派をいかに探索領域の色合いが強い“変革”に巻き込めるかが、大企業における社内変革を進める際の課題です。それを解決するためには、変革のビジョンやプランを構想するステップから、社内に浸透させるステップに移行する前に、もうひとつプロセスを挟む必要があります。 

それは、多くの社内ステークホルダーが「自分ごと」として変革に参加している状態を作る、プランを目に見える形にする「具現化」のステップです。 

両利きの経営で述べられている探索領域の3ステップを、企業変革における3ステップに当てはめると以下のようなイメージとなります。 

 

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本稿では、「1. 構想ステップ」と「3. 浸透ステップ」の段階の間に存在する「2. 具現化ステップ」が、なぜ大企業で企業変革を進めるために重要なのかについて解説します。 

 

「探索領域への挑戦」を余儀なくされる時代 

コロナ禍における社会情勢の変化により、多くの企業で変革が求められるようになりました。株式会社マンダムの『コロナ禍の対面コミュニケーションとおしゃれ・身だしなみの実態および意識調査』によると、人と人が直接対面する機会はコロナ以前に比べ96%も減少したとのことです。

コロナ禍がもたらした影響はコミュニケーションや働き方の変化に留まらず、多くの企業がニューノーマルに対応した新規事業の開発、収益化の課題に直面しています。 

ほとんどの場合、ニューノーマルで求められる新規事業の開発は、前述の探索の領域に該当するでしょう。市場、製品自体がパンデミック前と変わらない既存のコア事業においても、営業の非対面化、デジタル化などの探索を行わなければなりません。 

実際にはコロナによって問題が急に発生したというより、もともと存在した問題が急速に顕在化したと表現した方が適切でしょう。 

いずれにせよ、従来のように自社都合で探索領域に挑戦するかしないかを選択できた時代から、社会や市場の変化に適応するため、なんらかの探索領域への挑戦を余儀なくされる時代に変わったと言えます。それは、深化の領域で事業展開をしている企業においても同様です。 

 

なぜ企業変革において「具現化」が重要なのか? 

企業組織における探索領域の変革では、以下の2つの理由により「具現化」のステップが必要とされます。 

1. どういう状態になれば「変革が成功した」と言えるのか、多くの社員が明確にイメージできない

2. 変革が実現した状態のイメージを持てたとしても、どのようにすれば成功するかの方法がわからない

大きな組織であればあるほど、現状維持バイアス1 が働くので、そもそも痛みを伴う探索領域の変革は避けられがちなのです。  

探索領域の変革を実施すると経営陣が決心した場合も未知の挑戦になるため、上記2つがクリアにならない限り、社内のあらゆるステークホルダーを巻き込む必要がある変革の実現(=浸透)には至りません。 

企業として変革しなければならないとの理解と、社員一人ひとりが「自分が変わる必要がある」と意識を持つことは別物です。変革の構想段階においては、ひとつの成功事例もなく、構想の一部すら具現化できていない状態のまま、変革が実現した全体最適の状態を構想せざるを得ないケースも発生します。 

このような場合、多くの社員が「ひとつも成功体験がないにもかかわらず、変革が実現した全体最適の状態を描けるのか?」「そもそも、ビジョンだけ描いて実現するなら、すでにその変革が実現しているのではないか?」などと感じるでしょう。 

これを解消するためにも、目標構想の具現化のステップが重要となります。それは、例えば「構想を一部でも良いので形にする」「事業であれば収益化する」「営業生産性UPのためのDXであれば、実際に生産性が上昇することを証明する」などです。 

つまり、具現化ステップは自社都合の構想がマーケットに受け入れられ、きちんと機能することを社内向けに実証するプロセスとなります。 

 

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新規事業はもちろん、営業のデジタル化という社内DXですら、顧客側が自社の営業活動のデジタル化を受け入れない限り機能しません。そのため、市場の信認を得て初めて実現できるものだと認識する必要があります。 

市場の信認を得る具現化のステップにおいては、経営層と実際に変革の主体となる現場が共同で取り組むことが求められます。その体験こそ、多くの社員にとって変革を、会社ごとから“自分ごと”へと転換させるために重要な要素です。 

 

「共通の価値観」の形成こそが大企業における変革実現のカギ 

変革構想の具現化で、経営層と現場が共同で取り組む重要性をマッキンゼーの7Sというフレームワークを用いて説明します。 

 

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上図において、上半分の3項目が組織構造や戦略などの「ハードS」、下半分の3項目が人に関わる「ソフトS」です。それぞれの項目は以下のように定義されています。 

 

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社内変革の3つのステップを7Sに当てはめると、上3つのハードSが「1. 構想」で必要とされ、下3つのソフトSが3. 浸透」に求められます。そして中心に存在する共通の価値観が「2. 具現化」をもたらします。 

 

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7Sの中で共通の価値観の醸成が重要で、それが変革のキーとなる理由は、「ハードSを揃えたとしても、ソフトSが実現するわけではない」ことが原因です。 

下図は、一般的な大企業の探索領域の変革における7Sのイメージとなります。 

 

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上記イメージのように、深化の領域に強い大企業であればあるほど、それぞれの組織の機能が確立しており、多様な部門が存在します。しかし、部門間の垣根もしっかりしているものの、探索領域の変革に必要な「構想具現化浸透」を担う部署が完全に分かれているのが一般的です。 

一方、深化領域の事業を持たないベンチャー企業においては、7Sは下記のように変化します。 

 

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ベンチャー企業では、事業の構想の具現化(=事業化)が企業としての生命線ですので、全社一丸となって取り組めます。そのため、浸透の段階で苦労する可能性は高いものの、構想から具現化のステップまではスムーズに進行します。 

つまり、ベンチャーとは事情が異なる大企業において変革を進めようとすると「構想を担当する部署」「機能と浸透を担当する部署」がどうしても別になってしまうため、ベンチャーのような速度感を実現しづらいのです。 

そのため、構想するチームと浸透させるチームを意図的に結合する仕組みを作らなければ、構想と浸透を担当する組織が分断してしまいかねません。 

そこで有効となるのが、構想を担当するチームと浸透を担当するチームが、具現化ステージにおいて「構想を形にする苦労」「浸透させるために必要な機能」を共に“実感する”機会を意図的に作り出すことです。 

構想担当チーム、浸透担当チームの両者が「これで行ける、これで行こう」との確信を持つため、共通の価値観を作る具現化のステージが、大企業における変革の実現では欠かせません。 

 

最後に 

多くの社内ステークホルダーを巻き込まないと実現しない企業変革において、具現化ステップはとても重要な取り組みで、本来は積極的に作り出さなければならないほどです。 

しかし、具現化の段階を経るかどうかで変革の実現のスピードが大幅に異なるにも関わらず、多くのケースではこの段階がスキップされてしまいがちです。 

企業変革においては通常、非常に少数のメンバーでプランを描きますが、その実現のためには社内のマジョリティーを巻き込まなければなりません。 

多くのメンバーが「自分事として変化に参画できる土壌」として具現化のステップを経ることで、変革の成功に“確信をもち行動できる”中心メンバーを増やせます。それにより、変革に対し少数派が賛同している構想段階から、マジョリティーが賛同している浸透の段階にスムーズに移行できるでしょう。 

深化の領域に注力することで成長してきた大企業にとって、探索の領域の変革はベンチャー企業に比べ難易度が大幅に上昇します。 

大企業になればなるほど、探索領域のコーポレート・トランスフォーメーションのような大掛かりな変革を実施する際には、「コンサルティング会社のような“企画系”の組織」「機能・変革を実現する主体を担う事業部などの“実行系”の組織」に大きく分かれます。 

探索領域の構想から始め、構想が実現する(=深化の領域に移行していく)間を繋ぐ「構想の具現化」の重要性を理解し、実装していくことが、探索領域における企業変革を成功させるカギとなるのです。 

なお、当日の講演資料は以下よりダウンロードいただけます。ぜひご覧ください。 

マーケティング起点のコーポレート・トランスフォーメーション ~ 全社を巻き込めるかどうかの差はどこで生まれるのか ~ 

 

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■注釈

  1. 現状維持バイアス…変化や未知のものを避けて現状維持を望む心理作用のこと。 現状から未経験のものへの変化を「安定の損失」と認識し、現在の状況に固執してしまう []