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展示会後のリードフォローを成果につなげるために重要な観点

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BtoBマーケティングにおいて、展示会は今なお重要なリード獲得チャネルのひとつです。

特に製造業では、新規顧客との接点創出に加え、既存顧客に対しても、新製品やコンセプト製品に対する反応を直接確認できる場として機能しており、日常の営業活動では得にくい情報を引き出せる点において、依然として有効な接点といえます。

一方で、顧客との接点や情報収集のあり方は大きく変化しています。Webサイト、ホワイトペーパー、ウェビナー、動画、メールといった複数のチャネルを通じて、事前に情報収集を進めることが一般的になりました。

さらに近年は生成AIの普及により情報収集の有り様も代わり、展示会まで足をばなくてもなり、従来ほどの効果がでないケースも増えているように見受けられます。営業担当者や展示会に接触する前の段階で、比較や整理を一定程度終えているケースも見られます。企業側が提供する情報の形が多様化しているだけでなく、購買プロセスそのものが前倒しされている状況です。

このような環境では、展示会も単独の施策として評価されるものではなくなっています。出展して終わりではなく、会期中に得た接点を会期後のアクションにつなげるところまで含めて設計しなければ、成果は見えにくくなります。

つまり、展示会の価値は接点の数ではなく、その後の行動にどれだけ変換できるかによって決まるものになっているのです。

本記事では、そのような展示会における本質的な成果の創出を図る上で、必須となる考え方を整理します。

展示会の成果は「リードの獲得件数」だけでは測れない 

そもそも、展示会の成果を考える際、何を成果と定義すればよいのでしょうか。一般的には、リード獲得の件数を指標しているケースが多いでしょうが、それすら追わずに「露出に繋がった」というだけで終えている場面も見受けられます。

いずれにせよ、施策として実施する以上は社内に対して費用対効果に関する説明責任も発生しますので、それを叶える上ではきちんと展示会後のフォローまで含めて設計しておかなければなりません。

展示会後の結果を左右するのは「会期中の接点をどこまで次のアクションにつながる情報に変換できたか」「会期後にどの順番で動くべきかを整理できているか」です。展示会リードフォローの本質は、獲得したリードを網羅的に追うことではなく、誰に対して次の行動を取れる状態をつくれているかにあります。

この点を考えるうえで無視できないのが、来場者の記憶の変化です。展示会では短時間で多くのブースを回るため、各社の情報は時間の経過とともに埋もれていきますので、会場で接点を持てたとしても、その内容が曖昧なままでは、後の行動にはつながりません。

展示会直後のフォローが有効とされるのは、接点の記憶が残っているうちに関係をつなぎ直せるためです。

また、展示会で取得できる情報は単一ではありません。実際には、以下のように複数のデータソースが同時に発生しています。

<展示会で発生するデータの例> 

  • 主催者バッジのQR読取情報 
  • 名刺交換で取得した情報 
  • ブースでの会話メモ 
  • アンケートや「お客様カルテ」の記載内容 
  • セミナーや講演、ワークショップの参加情報 

これらを一括りのリードとして扱うと、接点の違いが見えなくなります。同じ展示会リードであっても、接点の深さや解像度は大きく異なります。

例えば、主催者バッジのQR読取のみの場合、通りすがりの来場者や販促物目的の訪問が含まれる可能性があります。一方で、会話を経て名刺交換まで至った相手は、その場で一定の関心を示していたと考えられるでしょう。

さらに、講演参加やアンケート回答まで含めると、相手の関心領域や検討状況をより具体的に捉えることができます。

このように、展示会リードは単なる連絡先の集合ではなく、接点ごとに異なる情報の束として捉える必要があります。会期後のフォローの質は、この接点情報をどこまで整理し、次の行動に結びつけられる形にできているかによって決まります。 

展示会では大量の接点が発生するため「リード情報の記録」の仕組みが必要になる 

実際問題として、展示会では、出展者側は1日に何十人、何百人と対応することになります。そのため「誰とどのような会話をしたか」を後から正確に思い出すことは容易ではありません。

来場者側も同様に、多くのブースを回る中で情報が混在し、個々の接点の記憶は時間とともに曖昧になっていきます。

このような状況では、会期中の接点をそのまま会期後のアクションにつなげることは難しくなります。

だからこそ、会話の中で得られた情報を簡潔に残せる記録の仕組みが必要になります。「アンケート」や「お客様カルテ」のようなフォーマットをあらかじめ用意し、対応したその場で要点を整理しておくことで、会期後のフォローの精度は大きく変わります。

ここで残すべき情報は、単なる「興味の有無」ではなく、後工程につながる情報でなければなりません。具体的には「相手が抱えている課題」「想定している用途」「導入時期」「競合状況」「次に話すべき論点」といった内容です。

これらの情報が整理されているリードは、単に関心が高いかどうかだけでなく、次の接触を図りやすい状態にあります。

展示会後にあらためて営業接触が成立するかどうかは、接点の有無ではなく、その接点がどの程度具体的な情報として残っているかに依存するのです。

このように考えると、展示会の成果は会期後のフォローだけで決まるものではないとわかるでしょう。 

すべてのリードを同じようにフォローしても成果にはつながらない 

とはいえ、展示会で獲得したリードを一律に追いかけても、成果にはつながりにくくなります。接点の深さや関心度が異なるにもかかわらず、同じ前提で対応すると、優先順位が曖昧になり、フォロー漏れや過剰対応が発生しやすくなります。

この優先順位を整理するうえで有効なのが、「リードプロファイル」「リードのエンゲージメント」を掛け合わせてリードを捉える考え方です。

BtoBマーケティングでデータ活用の起点となる「リードプロファイリング」の概念を解説でも述べたように、リードプロファイルは「自社にとって優先すべき相手かどうかを判断できる情報の定義」です。重点業界に属しているか、対象アカウントか、用途や企業規模が合っているか、意思決定に関与する立場かといった条件がここに含まれます。

一方のエンゲージメントは、相手がどの程度関心を示しているかという観点です。展示会での会話の深さ、講演参加やアンケート回答、資料請求、会期後のメール反応Web行動などが判断材料になります。

この二つを掛け合わせることで、「自社として優先すべき相手」であり、かつ「相手側の関心も高い」層が見えてきます。ネクストアクションにつながりやすいのは、この重なりが大きいリードです。

実務上は、展示会後のリードを大きく以下三つの優先順位に分けて捉えると整理しやすくなります。

<フォローするリードの優先順位> 

  • Tier 1:自社と顧客の双方で関心が一致しており、商談化の可能性が高い層 
  • Tier 2:一定の接点はあるものの、関心や検討状況の見極めが必要な層 
  • Tier 3:接点が浅く、ナーチャリングを前提に関係構築が必要な層 

まず最優先となるのは、Tier 1の自社と顧客の双方で関心が一致している層です。会話の中で具体的な課題や用途が確認でき、次回打ち合わせやデモの話に進む可能性がある相手が該当します。このようなリードは、営業が早期にフォローすることで、そのまま商談につながる可能性があります。

次に、名刺交換や一定の会話ができているものの、関心の度合いや検討状況が明確ではない層はTier 2に位置付けられます。この段階では、営業が直接対応するのか、インサイドセールスが一度会話をつなぐのかを見極める必要がありますが、会話の内容や取得できている情報の粒度によって、次の打ち手を調整する対象になります。

最後に、主催者バッジのQR読取のみなど、接点が浅い層は、優先度が最も低いTier 3となります。この層まで営業が個別に追うことは現実的ではありません。関心が顕在化していないリードについては、ナーチャリングを前提に継続的な接点を持ち、反応が見られた段階で再度優先順位を引き上げる方が合理的です。

一方で、例えば、直接購買には繋がり得ない学生や、展示会ブースまで逆に売り込みに来る層なども存在し、玉石混合な中からフォロー対象を選定する必要があります。つまりナーチャリングを実施しても将来的には案件化に繋がらないリードは精力的にはフォローしないなどの設計も必要です。

展示会では事前に会話内容を設計しておくことも大切 

ここまで見てきたように、展示会後のフォローは、接点の質によって大きく左右されます。言い換えると、会話の中でどこまで相手の情報を引き出せていたかが、そのままリードの優先順位に影響します。

展示会では、ブースデザインや展示物、配布物といった「見せる側」の設計に意識が向きがちですが、来場者にとっては展示員との会話も含めて一つの体験です。特に製造業では用途や検討段階が多様であるため、会話の中で何を引き出すかによって、その後のフォローの精度は大きく変わります。

しかし実際には、展示会には営業担当者だけでなく、サポート部門や開発部門など、日常的に顧客対応をしていないメンバーが立つケースも少なくありません。その結果、会話の内容が担当者ごとにばらつき、十分な情報が取得できないまま接点が終わってしまうことがあります。

この状態では、リードのエンゲージメントは高まらず、結果としてTierも上がりにくくるでしょうつまり、会話の質がそのまま優先順位の引き上げに影響する構造になってるのです

ここから言えるのは、だからこそ、展示会前の段階で、誰に対して何を聞くのか、どの順番で会話を進めるのか、どの状態になれば次のアクションにつなぐのかといったシナリオを設計しておく必要がということです

筆者が過去に参加した海外の展示会では、まず相手の議論テーマや困りごとを聞き、親和性が低ければ早い段階で見極めていました。本のほとんどの展示ブースでは製品説明から入ることが多いため、とても対照的に感じ、印象に残っています。

用途探索の段階にある相手に対して製品説明を重ねても、必要な情報は得られません。一方で、導入が近い相手に対して課題ヒアリングだけを続けても、機会を逃すことになります。相手の状態に応じ会話を設計できているかどうかが、その後のフォローの具体性を左右するのです 

フォローの質を上げるにはデータ活用も求められる 

なお、展示会後のリードナーチャリングでは、単なるサンキューメールで終わらせるのではなく、会場での体験と接続した情報提供が求められます

BtoBビジネスで必要な「ナーチャリング」の2つの目的思考でも同様のことを述べていますが、ナーチャリングの目的は「展示内容に関連する資料の案内」「会話の文脈に沿った情報」を届けることで、来場時の記憶を呼び起こし、関係性を強化、関心の維持につなげることです。

イベント参加直後は、来場者の記憶に接点が残っており、通常時より反応が得られやすい状態です。一方で、日が経つほど、来場者の中で自社ブースの記憶は他社の情報に埋もれていきます。

そのため、少なくとも優先度の高いリードについては、会期後できるだけ早く動く必要があります。会期中に次回打ち合わせやデモの仮予定まで置けていれば理想ですが、そうでない場合でも、会期後の初回対応を遅らせないことが大切です。

実務的には、Tier別にSLAを置いておくと運用しやすくなります。 BtoBの分業制で役立つ営業・マーケティングのSLAとは何か? でも解説しているように、SLAとは自社と顧客との間でサービス内容と品質レベルについて合意・明文化した文書のことです。

例えば、「Tier 1は当日」「Tier 2/3は24時間以内」「営業が受け取ったAcceptedリードは72営業時間以内に初回対応を完了する」といった基準です。こうした運用ルールがあるだけでも、フォロー漏れと過剰対応の両方を防ぎやすくなります。

ここまで述べてきたことを実際に運用するうえで、ファネル設計やシステム連動にまで深く立ち入る必要はありませんが、リードマネジメントを成立させる以上、データ活用の手法は定義しておきましょう。

Inquiry、MQL、Sales Accepted、SQLといったリードのライフサイクル定義を置き、どの状態のリードを誰が引き取るのかを明文化することは必要です。

また、キャンペーンステータスや担当割当を標準化し、可能な限りCRMやMAへ即時連携しておかなければ、展示会後のフォローは瞬く間に属人的になります。現場に散在したままの名刺やExcelだけでは、せっかくの接点を継続的な成果に変えにくいでしょう。

展示会後のフォローの質は、会期前の設計と会期中の接点で決まる 

ここまでの内容を踏まえると、展示会フォローの質は、会期後の対応だけで決まるものではないとご理解いただけたでしょう。

どのような接点を持ち、どのような情報を取得できたかという会期中のプロセスだけでなく、それを前提とした事前設計によって大きく左右されます

実務上は「ブースデザイン」「配布物」「人員配置」「説明資料」搬送・搬入といった準備忙殺され実務上会期が近づくにつれて無事に当日を迎えられるかどうかが優先されていきますのでフォローの設計は後回しになりがちです。

しかし、出展の目的が案件化なのか、市場探索なのか、重点アカウントの深耕なのかによって、会期中に取得すべき情報も、会期後の役割分担も変わります。目的が曖昧なままでは、接点の取り方も、その後の動き方も揃いません。

そのため、展示会が決まった段階で、フォローまで含めた前提を整理しておく必要があります。具体的には「どのようなリードを優先するのか」「どの基準で選別するのか」「営業・インサイドセールス・デジタルでどのように分担するのか」といった役割設計です。

あわせて、KPIも単なる件数で止めないことも大切です。見るべきは、リード獲得件数だけではありません。「初回対応時間」「Sales Accepted率」「商談化率」「どの施策が影響パイプラインを生んだか」といった指標まで見て初めて、展示会の成果を正しく評価できます。

展示会リードフォローの本質は、獲得したリードを網羅的に追うことではありません。誰に対して、どのような次の行動を取るべきかが明確な状態をつくれているか。その設計ができているかどうかが、最終的な成果の差につながるのです。 

 

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