Marketing Strategy

DX=IT化だけでは終わらない!(3) - プロジェクトを止めないために -

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前回までのふりかえり 

前回の記事で部門間をまたいだDXプロジェクトの組み立て方の大枠として以下のステップになることが多いということを述べました。 

  1. 全体設計をする(ビジョン・マスタープラン等) 
  2. PoCで意義づけしながらステークホルダーに腹落ちさせる 
  3. 結果を全体設計に反映させる 

シリーズの最終回となる今回の記事では、その全体設計のアプローチの仕方と、さまざま意見を取り入れながら軌道修正していくための会議体のあり方について述べていきたいと思います。 

第一回でも記載しましたが、いろいろなDXの切り口がある中で我々はビジネス側の視点で書かせていただいております。その中で多くのプロジェクトをご一緒させていただいている営業・マーケティング領域では以下のようなプロジェクト体制図になるケースがよく見受けられます 

プロジェクト体制図

このような部門横断の体制図の中でプロジェクトを設計していくポイントを解説します。

プロジェクト設計のカギは「オーナーの想い」  

プロジェクトを進める上で、プロジェクトオーナーの役割は重要です。その意向を反映させていくことが円滑にプロジェクトを進めていくためには重要になってきます。 

そもそも、プロジェクトが発足する最初の一歩は企業のトップや役員などが全社に対する危機感や想いに起因することがほとんどです事業部単体のプロジェクトの場合は事業部のトップであり、販売会社や外資系の企業だと社長やカントリーマネージャーになるでしょう。 

その中で、トップからの方針説明の資料や役員会の議事録の一説が引用されてプロジェクト発足の根拠になっている場合がよく見受けられます。一方で、プロジェクトが発足し、そこにアサインされたプロジェクトチームに話を聞くと、プロジェクト発起人の実現したい理想像やプロジェクト発足の背景など、一次情報としてトップから直に話を聞くことがないケースをよく耳にします。間に立つ管理職からは話を聞いたことはある、または直接聞いたとしても、結果プロジェクト発起人が何を考えているか、なぜそれを目指すのかわからないということもしばしば耳にします。 

これはプロジェクト発起人となるレベルの役職、役割の人とプロジェクトにアサインされるメンバーの視座、視野がそもそも違う。また役職役割がそもそも違うので、同じゴールを目指しているとしても、その意味付けの優先順位がメンバーや帰属している組織によって違う事に起因します。 

部門横断の対応が求められるときに、「全員が100%の満足を得る解」を出すことは残念ながらあきらめるしかない場合もあります。ここを求めてしまうといつの間にか、プロジェクト発足時の狙いや意図がぶれてきてしまうためです。前回の記事で記載した、全体にはプラスでも自部門にとっては必ずしもプラスにならないという場合がその最たる例です。 

これらに加えて少し生々しい話になりますが、何をするにしてもコストが発生します。ヒト・モノ・カネのリソースを考えたときにトップが施策に対して腹落ちしているか否かトップの狙い想いを実現するためのプロジェクトの立て付けになっているか、が社内での予算獲得のカギになるケースも多いです。 

オーナーの話を聞いた上で、各ステークホルダー部門の部門長にも個別に話を通しておくと、プロジェクトが円滑に進められるケースも多いです。「根回し」というと悪く聞こえがちですが、前回の記事で述べた通り少しずつ仲間を増やしていく上では以下のような活動が不可欠なのです。 

  1. プロジェクトオーナーの想いを聞く 
  2. 各ステークホルダー部門の声を聞く 
  3. ヒアリングの結果を体系化しビジョンを言語化する 
  4. ビジョンを達成するためのマスタープランを作る 

文字にすると簡単そうに見えますが入り組んだ思惑を体系化することが時に困難を極めることもあります。そこで我々のようなコンサルティング会社に依頼するというのも一つの手段になるかと思います。 ベストプラクティスを持っているというのもありますが、クライアント様の中にはステークホルダーにヒアリングした状況を「第三者視点から客観的に事実をみる」ということに対して価値を感じていただく場合も多いです。 

コンサルティング会社にステークホルダーへのヒアリングを依頼する場合、一番重要になるのがヒアリング先の選定です。先ほど述べた通り文字通りトップに確認する、という場合であれば問題のないケースが多いです。しかし、何かしらの事情で依頼ができない場合、「想い」がどんどん歪んでしまうことも少なくありません。 

同じことを聞いても言った意図というものは意外と伝わらないものです(たとえそれが文章で言語化されていても)。伝言ゲームの過程でどんどん意図が変わることがないよう、改めてですがプロジェクトオーナーから直接意見をもらう、その想いを実現できる実行可能なプロジェクト設計、ロードマップに落とし込むという工程が重要です 

一方、あまりにもトップの想いを優先しすぎ、現場の実情からどんどん離れていってしまうと、現場が疲弊してしまいます。この2つのバランスを保つことが求められます。 

プロジェクトを回し続けるための会議設計 

一度プロジェクトオーナーから意見を聞くと、ある意味それは「(なにかしらの形で)実現する」という説明責任 / Accountability が生まれることになります。プレッシャーに感じる反面、そういう機会がないとプロジェクトは進まない、という側面もあります。先ほどの体制図に必要な会議体をあわせて載せると以下のイメージとなります。これらに関しては具体的なマーケティングDX (Go to marketDX)の紹介とともにこちらのホワイトペーパーにまとめておりますので、ご確認ください 

 

プロジェクト体制図と会議体

役員の方には毎週の定例会に出ていただきキャッチアップいただく…というのも理想的ですが現実的には難しいかと思います現実問題でいうと想い(Why)の部分が実現できれば各施策(What)と施策の中身(How)に関しては現場に移譲するというのが一般的でしょう。 

ただし、そういう場合にも四半期などのタイミング(Quarterly Business Review = QBR)できちんと報告し、方向性がどうなっているかきちんと意義付けするということも重要になります。また、DXが短期で成果が見えづらいということもQBRを実施する重要なポイントになります。3か月後のQBRで発表するアジェンダ、プロジェクトの進行予定を先に決め、そこできちんと進捗を報告するということを一つのゴールとする逆算方式でプロジェクトを進行していくためにもQBRは重要な意味を持ちます 

(我々は外資系企業ですので海外にもネットワークを持っておりますが、海外では一般的なマーケティングプロジェクトでもQBRが行われていることは補足しておきます。) 

結びに  

「ここから手をつけましょう」というような具体的な施策に関しては言及しておりませんが、この連載を通して、全体感が伝われば幸いです。それらの必要な施策に関しては、ミッション・ビジネスモデル・そのプロジェクトが置かれた状況で大きく異なるというのが正直なところです。 今回はDXという切り口からお話しさせていただきましたが、今後各施策のベストプラクティスや進め方など、定期的に発信していきます。 

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