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マーケティングオペレーションズから紐解く「社内情報共有プラン」の成功ポイント

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ポストコロナ時代の2024年現在、DXに伴い利用する情報共有ツールが増加傾向にあり、「情報管理」「コミュニケーションの効率化」などに課題を抱える企業が増えているように見受けられます。 

特にBtoBビジネスでは、チーム内の交流だけでなく、部署を横断したコラボレーションが求められ、本業の傍ら新規事業開発のためのマーケティング活動に従事する必要もあります。 

このような複雑なコミュニケーションや業務に対して、マーケティングオペレーションズの考え方が有効となります。 

マーケティングオペレーションズは、主にマーケティングとIT部門の間で、データマネジメントやデジタルツールの管理、キャンペーンマネジメント、チーム全体の教育を担う専任部隊を指します。 

ただし、BtoBのような複雑な購買サイクルのビジネスでその場その場の情報共有を続けると、ナレッジが適切に蓄積・展開されず、無駄なコミュニケーションが生まれかねません。 

このような課題に対する抜本的な解決策として、米国では、マーケティング・オペレーションズの設置が増えておりマーケティング・オペレーションズの専任チームを置く企業が7割を超えるほど主流になってきています1 

日本でも米国のようにマーケティング・オペレーションズの機能を組織に組み込めればよいのですが、現時点ではマーケティング・オペレーションズに適した人材は少なく、短期的に組織を作り上げることは非常に難しいのが実情です。 

そこで本記事ではマーケティング・オペレーションズの機能や役割をベースにしつつ、日本企業においてもその本質部分の恩恵を享受するための「社内情報の共有プラン」について、当社の事例も交えて解説します。 

そもそも「マーケティングオペレーションズ」とは 

そもそもマーケティングオペレーションズとは、「マーケティング活動の計画、実行、測定を効率化し、最適化するためのプロセス・システムの管理」を指します。具体的には、マーケティング活動に必要なテクノロジーの選定と管理、データ管理、キャンペーンの戦略立案と実施、成果の分析と報告などとなります。 

マーケティング・オペレーションズチームは、マーケティングとIT部門の間に立ち、データを起点にした意思決定をサポートすると同時に、企業全体のマーケティング活動の一貫性と効果を高める役割を果たします。 

Marketing Ops社の調査レポートによると、マーケティング・オペレーションズでは「データの分析・統合・レポート」「ツールの運用ポリシーと手順の設計・実装・最適化」を行うため、いわゆる「DX人材」が必要とされています2 

しかし、日本では、2030年には最大で79万人のDX人材が不足する可能性があると試算されています。ただでさえIT部門の人材不足が深刻であるにも関わらず、短期間でマーケティング・オペレーションズの組織体制を構築するのは困難であるといえるでしょう3 

もし日本企業がマーケティング・オペレーションズの機能を導入したいなら、「社内情報の共有」の考え方を取り入れるのが、最も恩恵が大きいと考えられます。  

マーケティング・オペレーションズの社内情報共有の根幹となる「ナレッジマネジメント」 

マーケティング・オペレーションズで積極的に取り入れるべき「社内での情報共有」の機能には、根幹部分にナレッジマネジメントの考え方があります。 

ナレッジマネジメントとは、企業や社員の持つ知識・経験などを共有して、創造的な経営を実践することを指します。これは1990年代に一橋大学の野中郁次郎教授(現・一橋大学名誉教授)らが提唱した「知識創造理論」に端を発する理論です4 

組織が持つ知識には、個人が持つ知識やノウハウ、長年の勘を指す「暗黙知」と言葉や図表などの形でデータ化された知識のことを指す「形式知」が存在します。この暗黙知を形式知に転換・共有し、組織全体を知的に進化させることがナレッジマネジメントの基本的な考え方だと野中教授は述べています。 

つまり、ナレッジマネジメントでは知識の属人化を防ぎ、より広くの関係者に知識を横展開することが重要なのです。 

ナレッジマネジメントのためには、情報を適切に蓄積するだけでなく、その情報を「見たい人がいつでもアクセスできる」環境づくりも求められます。 

2018年に公開されたSun Young Sung/Jin Nam Choi氏共著の論文によると、専門的な知識を有する人が、知識を適切に展開し、社員がそれらにアクセスできる土壌がある企業は、イノベーションを起こしやすいとのデータもあります5。これこそが、マーケティング・オペレーションズの本質的な恩恵といえるでしょう。 

社内情報共有で必要な「コミュニケーションプラン」 

分業が進む米国では、マーケティングの中でも複数専任チームにわかれるほか、日本では営業と一括りにされるインサイドセールスやアカウントエグゼクティブ、カスタマーサクセスなど、さまざまな部門・チームが活動しています。 

したがってマーケティング・オペレーションズではそういった複数部門と効率的に情報共有を行うことを前提として情報共有プランを設計していく必要があるのです。 

これを「コミュニケーションプラン」と呼称し、組織的なマーケティング運用を実現させるために、コラボレーションを加速させる体制作りが重要だといわれています6 

コミュニケーションプランを作成する際には、該当部門で行われているミーティングやコミュニケーションチャネルを全て洗い出し、各々のコミュニケーションタイプや、利用目的、参加者、頻度を整理していくのが通例です。 

実際に、コミュニケーションプランを実行に落とし込むにあたり、ベストプラクティスなどのナレッジの蓄積には「社内Wiki」を活用します。社内Wikiでは利用目的に則したコミュニケーションチャネルを整理した上でコミュニケーションツールの指定まで含めて、それぞれの部門で目線が揃うように細かく文書化します。 

このようなマーケティング・オペレーションズのコミュニケーションプランに関わる基本的な取り組みは、マーケティング・オペレーションズの組織を持たずとも実践可能なため、チームや部門などで情報共有やコミュニケーションを整備していくにあたり、積極的に取り入れていくのが有効です。  

社内情報共有プランを整備するメリット 

マーケティング・オペレーションズにおける社内情報共有で必要な考え方を踏まえ、コラボレーションを加速させる情報共有プランを構築するにあたり、情報をただ保存するのみならず、活用を推進していく必要があります。特に日々の社内コミュニケーションの改善が重要です。 

コロナ禍でリモートワーク体制の構築にTeamsをはじめとするチャットツールなどのコミュニケーションツールを導入する企業が増えました。 

この際、迅速に情勢に対応したシステム構築を行う必要があったため、従来のメール以外のコミュニケーションツールに対する運用方針を定めず、なし崩しに各チャネルを利用している企業も少なくありません。 

実際に、フォーブス誌によると従業員の81%近くが、コミュニケーションツールによるミスコミュニケーションが「非常に頻繁に起こる」「頻繁に起こる」「たまに起こる」と回答しています7 

同誌によると、社内コミュニケーションツールを賢く選択すれば、企業文化を変革し、前向きなビジネス成果を生み出し、リーダーが従業員を指導することが可能になるとのことです。 

米国で企業向けチャットサービスを展開するPumble社も、効果的なチームコミュニケーションは従業員の生産性を最大25%まで向上させる可能性があると指摘しています8 

以上を踏まえると、日本企業でも情報共有プランを整備すれば、効率的なコミュニケーションが増え、従業員は情報を迅速に取得しつつ、タスクに集中する時間の増加の恩恵を受けられるといえます。 

情報共有プラン策定時に考慮すべき「情報の性質」とは 

ただし、効果的な情報共有プランの策定では、情報の性質に配慮し、コミュニケーションツール・チャネルを選定する必要があります。 

2018公開Sun Young Sung氏/Jin Nam Choi氏共著の論文では、企業におけるナレッジマネジメントにおいて知識(=情報)は大きく「ストック」と「フロー」の2つの種類に分類されるとされています5 

以下より、それぞれ個別に解説します。 

ストック情報 

ストック情報とは、研修やOJT、外部リソースを用いた教育プログラムなど、企業成長のために従業員が押さえておくべき知識や情報を指します。 

例えば、マニュアルや明文化されていない「お作法」と呼ばれるガイドラインなど、繰り返しアクセスしたい情報リソースはストック情報にあたります。 

フロー情報 

フロー情報とは、社内コミュニケーションにおいて、知識共有システムを使いながら情報を活用し、コミュニケーションを活性化するプロセスです。 

日々メールやチャットなどで行う、繰り返しアクセスが不要な包括的なコミュニケーションなどがフロー情報に該当します。  

情報共有プランの策定では自社の状況に即したツール・チャネル選定が必要 

ストック情報・フロー情報の特性を踏まえた上で、適切なコミュニケーションツール・チャネルを選定するためにはどのようにすればよいのでしょうか。 

デジタル上のコミュニケーションが増加するなかで、日々従業員から何らかのチャネルで発信される情報が、今後の業務に活きる重要な情報である可能性もあります。 

つまりフロー情報として扱っていた情報が、実は重要なストック情報である可能性もあるのです。 

前述の同論文では「フロー情報に対する情報共有プロセスが整っている企業は、イノベーションに対して正の相関がある」という調査結果も出ています。 

このように情報共有プランの策定では、企業として情報の性質に応じ、情報共有プロセスを整備していくことが求められます。一方で、企業全体、部署・チーム内でも情報共有のルールが定まっていないことを課題に持つ企業も多いでしょう。 

企業によっては部署単位で利用するコミュニケーションツールが異なるため、大まかな情報共有ガイドラインがあったとしても。実運用と異なることもあるかもしれません。 

そのため、適切な情報共有プランを整える上では、部署・チーム単位で利用しているツールや、日々のコミュニケーションや共有する情報の粒度などに則したルールの整備が大切です。 

社内情報共有プロセスを整理したマーケットワン・ジャパンのケーススタディ 

当社(マーケットワン・ジャパン合同会社)でもマーケティング・オペレーションズのコミュニケーションプラン策定方法に則した形で、実際に情報共有プランを整理し、実行に落とし込んだ経験があります。 

そこで、情報の性質に応じたツールの使い分けについて、以下の2通りを紹介します。 

  • ケーススタディ①:チーム内コミュニケーションの作成 
  • ケーススタディ②:ナレッジ・ベストプラクティスを集約させる社内Wiki 

次項より、個別にみていきましょう。 

ケーススタディ①:チーム内コミュニケーションの作成 

当社では、コロナ禍に既存コミュニケーションツールからTeamsに切り替える運びとなりました。 

その際、当時は情報共有プランを設計しないまま運用を開始したため、日々のコミュニケーションと今後見返すべき情報が各チャネルに混在し、情報の活用が困難な状況にありました。 

そこで以下の手順でチーム内のコミュニケーションを整備しました。 

手順
具体的なアクション
手順1:社内コミュニケーションの改善担当者のアサインプランニングから運用の定着までアカウンタビリティをもって遂行するため、専任担当を置いた。
手順2:現状のコミュニケーション方法の洗い出し現在行われているコミュニケーションの目的や扱われている情報の性質の理解に務める。
必要に応じて既存のチャネルの管理者にヒアリングをし、そのチャネルが活用されているのかを調査した。
手順3:コミュニケーションツール・チャネルの性質の理解Teamsではスレッド形式の「チーム」と「チャット」の両チャネルが存在するため、各チャネルで利用可能な機能を把握した。
手順4:「コミュニケーションツール・チャネル」「共有したい情報」の性質に則したチーム内の情報共有方法を整理Teamsのほか、情報共有に利用するツールの性質を洗い出し、情報種別・利用目的・利用ツールの判断軸の観点で整理した(※図1)。
ほかにも、各ツール内に存在するチャネルやチャットグループの使い分けについても同様に洗い出し、それぞれの用途や利用事例を整えた。
手順5:手順3で整理した内容をルール化し、チーム内にドキュメンテーションして展開チームメンバーが見返せる社内Wiki(※後述)にドキュメンテーション(※図2)し、別途活用方法の周知を目的としたチームミーティングを開いて、説明を行った。
手順6:担当者がチーム内でルールに沿って運用が行われているか伴走し、定着までサポート実際にドキュメンテーション通りに運用がされているか日々担当者が確認するほか、Teamsの機能を利用し、それぞれのチャットグループやチームチャネルに用途を掲示することで運用の定着を測った。

 

1.手順4の情報共有ツールを整理した例マーケティングオペレーションズ(MOps)から紐解く「社内情報共有プラン」の成功ポイント

2.手順5のドキュメンテーションの例 

マーケティングオペレーションズ(MOps)から紐解く「社内情報共有プラン」の成功ポイント

ケーススタディ②:ナレッジ・ベストプラクティスを集約した「社内Wiki」の整備 

ケーススタディ①の手順5でも言及したとおり、当社のデジタル&コンサルティング部門では社内Wikiを構築しています。 

プロジェクトに関するベストプラクティスなど、ストック情報とすべき資料がSharePointの至る所に保管されており、見たい情報に自力でたどり着けないことも増えてきていることが課題となっていました。 

加えて、新規加入メンバーのオンボーディングを行うにあたり、プロジェクト管理にまつわるベストプラクティスを集約させ、ナレッジの平準化を図る必要がありました。 

そこで、当社では社内WikiにMicrosoft社のナレッジ集約ツールである「Loop」を利用しています。 

社内Wikiの整備でもチーム内のコミュニケーション改善施策と同様に専任の担当者をおき、以下の手順で社内Wikiの構築、管理を行なっています。 

手順
具体的なアクション
手順1:社内Wikiに必要な大項目を整理 プロジェクト全体のプロセスを深く理解している部門長が必要な項目を洗い出した。
手順2:既存のストック情報のうち社内Wikiに記載すべき情報・資料を整理チームメンバーに協力を依頼し、SharePointに分散されているよく使う資料や役立つマニュアルなどを紹介してもらい、社内Wikiに組み込む資料を定義した。
ほかにも個人が所有するナレッジをチームに展開すべく、日々利用するTeamsのチームチャネルで日々ナレッジを投稿してもらうチャネルを作成した。
手順3:手順1で洗い出した項目に沿って、手順2で出てきた資料を格納するWikiページを作成 各資料や項目に則したドキュメンテーションを行い、チームメンバーが探しやすい社内Wikiの構成にするほか、たどり着きたい情報を検索できるように整備した。
手順4:社内Wiki完成後、管理を目的とした運用方法をチームに展開 社内Wiki完成後はチームミーティングでの周知を行い、専任担当者が社内Wikiを統括する一方、チーム全体で社内Wikiのメンテナンスを行う旨を周知した。
各ページにおいて、目的/概要、管理者、作成者、最終更新日時の項目を追加し、責任をもって管理されるように仕組み化した。

おわりに 

マーケティング・オペレーションズそのものの取り入れには多くのリソースが必要ですが、その基本となる情報共有のプランニングについては専任チームなしでも、すぐにでも取り入れられます。 

ただし、その場合は情報共有プランを絵に描いた餅に留まらず、実行まで落とし込むことが重要です。場合によって、ルール作りから運用の定着まで担当者を決めて責任をもって遂行させる必要もあります。 

たとえ最初はマーケティングのみの取り組みであったとしても、チームでコミュニケーション効率を向上させた事例が生まれれば、それを「小さな成功体験」とし、自社全体にその必要性を訴えられます。 

大切なのは「スモールスタートできる範囲で、一日の稼働の余力を生み出していくこと」にありますので、まずは部門単位でも情報共有プロセスを整理することから始めてみましょう。

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  5. *Sung, S. Y., & Choi, J. N. (2018). Building knowledge stock and facilitating knowledge flow through HRM practices toward firm innovation.[][]
  6. 丸井 達郎 著 廣崎 依久 著 「マーケティングオペレーション(MOps)の教科書 専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識」[]
  7. フォーブス誌 「Leveraging Technology For Internal Communications In Uncertain Times[]
  8. Pumble Communication in the Workplace Statistics 2023[]