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【翻訳記事】アカウントベースドマーケティング(ABM)であるもの、違うもの

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昨今は、ABMアカウントベースドマーケティング)に取り組む企業が増えている一方でABMとは何か」に対する正確な理解は進んでいないように見受けられます。 

そこで今回はMarketOne InternationalでリリースされたWhat Account-based Marketing (ABM) is – and what it’s notをベースとして翻訳と一部加筆を加えた記事をお届けします。本稿を通して、ABMのようで、そうではないモノを取り上げつつ、一般のマーケティング手法と比較することで、ABMとは何かを紐解いていきますので、ぜひご一読ください。 

ABMではないものそれは、リードジェネレーションキャンペーンです。ABM四半期ごとのKPIを元に評価する」「短期的な影響を確認する」といったことはできません。

アカウントベースドマーケティングとは、新たなタスクと目標を伴う集中的な取り組みです。顧客接点チャネルの増加に伴い、実際の顧客接点の数も増えますが、マーケティングはこれらを上手く“オーケストレーション(指揮)して連動させていく仕組みを考えなければなりません

そこでは従来よりもオーダーメイドのメッセージを作成し検証を繰り返す必要があるでしょう多くのBtoB組織にとって、四半期ごとに行っていた目標設定と計測を、より長期的なものにすることが最も辛抱を強いられる変化となります。 

MarketOne EMEA戦略アドバイザリー部門ディレクター Kalja Moolenaar

ABMに取り組んでいます」それは本当? 

近年のBtoB業界ではABMに取り組んでいます」というフレーズがよく聞かれますが、実態はどうなのでしょうか 

Terminus ABM社2020 state of ABM report1」によれば、BtoB組織の94.2%が現在ABMプログラムを実施していると報告しているにもかかわらず、ABMへの理解は道半ばだと判明しています。

ABMを実施している組織のうち、51%ABMの状況について「試験的」「早期段階」と回答しました。 

さらに、ABMプログラムにおいて営業チームとマーケティングチームが完全に連携が取れていると回答したのは僅か13に過ぎなかったとのことです 

この結果は驚くことではありません。ABMを行うことは容易ではなく、相当なリソースと予算に加え、新しいマインドセットが必要になりますABMの実施による影響と責任の範囲は、単に高付加価値なアカウントをターゲットにすることをはるかに逸脱しているのです 

このような状況を加味しながら、ABMの本質を理解するために、次項からABMのようで、実はABMとは呼べない取り組み」と対比しながらみていきましょう。 

ABMではないモノ①:ターゲット企業の選定「だけ」をすること

ABMターゲット企業を特定してリストを作成し、理想的な顧客プロファイル(ICPs)」を決める取り組みですその上で、バイヤージャーニーの各段階に合わせて適切にパーソナライズされたコンテンツとメッセージを作成し、キャンペーンを実行し、効果測定の最適化が必要です 

ABMは、見込み客の行動を深く掘り下げ、自社ビジネスの目標に基づいた営業とアカウントプランから得られる具体的な顧客インサイトを集めることによってのみ達成できるのです 

すでにABMに取り組んでいる場合、ターゲット企業はどのように選定しているか把握していますか?営業部長、マーケティング、またはレベニューオペレーションが決める、あるいは、そもそも直感で選ぶといった状態になっていないでしょうか。 

ABMでは、データを通じた検証プロセスに基づき高付加価値企業であるからターゲットにすべきと確信を伴った選定が必要ですつまり、 ABMにはデータに基づいたターゲットアカウントへの戦略が求められるのです 

ABMではないモノ②:ツールや小手先の手法「だけ」を取り入れること

ABMは、マーケティング戦略やアプローチを指しますつまり、ABMリードジェネレーション営業による顧客転換」の枠を超えた、深い顧客関係を築くための体験を重視した戦略です 

例えば「メッセージに動的な名前を追加する」「ランディングページの見出しを変更するだけの単純な個別化ではないといえます 

ABMは包括的で購買フェーズ間の連続性ある顧客中心のアプローチであり、一貫性ある魅力的な顧客体験を届ける施策です。見込み客や顧客と継続的な関係を構築し、顧客自身よりも顧客をよく理解することに重きを置いています。 

ABMで成功を収めるためにはC-Suite(企業の幹部)」からの賛同が求められます。その理由はABMでは全社的にアカウントベースのマーケティング営業戦略を実施するため、仕組みから思想まで全てをアカウントベースにしていくことが必要であるためです 

ABMではないモノ③:ABM用ツールを使用する「だけ」で終わること

ABMにおける技術的スタックの活用意義はABMプロセスをより効率的にすることにありますしかし、最新のソフトウェアを購入したからといって、直ちにABMの実行速度が加速するわけではありません。 

実際、B2B MARKETING社によれば、マーケティング従事者のうち、ABMツールに対して深い理解があると述べている割合は、わずか16%にすぎない2のです。 

テクノロジーの使い方を理解し、活用可能なファーストパーティデータとサードパーティーデータを構築することでデータインサイトチャネル戦略を活用したマルチチャネルのABMキャンペーンを実行できるようになります 

ABMを実施する際には、自社のビジネス目的のなかで「ABMを取り入れることで達成しえるものは何なのかというゴールに到達するための地図と実行リソースを用意しましょう。 

ABMを開始するための基本的な技術スタックは「CRM(顧客管理ツール)「MAマーケティングオートメーションプラットフォーム」「アカウントの観点からデータを取り込み整理するプラットフォームです。 

テクノロジーはしばしば「魔法の銃弾」のようにみられますが、単なるツールにすぎません。 

実際に、Momentum ABM社CEO Alisha Lyndon氏はABMについて以下のように語っています。 

ABMの実施を急いでいる企業は、ABMとしてさまざまな製品やサービスをリブランディングしたり、再編したりしています。しかし、彼らはABMが技術ではなく、むしろアプローチだということを理解していません。ソフトウェアやAI技術の単なる組み合わせというよりも、社内や顧客との会話や調査、適応力、傾聴能力を基盤として考えるべきものなのです。3

ABMではないモノ④:ターゲットアカウントに対してナーチャリングをせずにコールドコールをし続けること 

ABMとは、複数のチャネルを跨いで顧客にアプローチするなかでも、明確かつ統一された戦略を展開する取り組みです。 

架電による顧客との会話は関係構築において重要な役割を果たしますが、それは顧客セグメンテーションと顧客の購買ステージに基づく包括的なアプローチの一部でしかありませんABMは単なるセールス手法ではないため、“ただコールをし続ける”のではなく、ナーチャリングに繋げる必要があります。 

ABMではないモノ⑤:デマンドジェネレーション「のみ」を目的としたキャンペーン 

ABMでは、自社がアプローチするべき大企業のなかでも大きなリターンをもたらす可能性の高い新規の企業群を小規模なセグメントに絞り込んでいきます加えて、既存顧客のなかから選定された企業に対しては、個社ごとの深い関係を築く必要もあります 

これはいわゆる「デマンドジェネレーションが大量のQualified leads(MQL)を生み出し、より大きいセグメントのなかから新規顧客の獲得に重点を置いているのとは対照的です。 

確かにABMはデマンドジェネレーションの機能を果たす点については事実です例えば、ブランド評価の向上や、新規リードやターゲットとなる市場のセグメントなどが該当します。 

ただし、ABMはチャネルやアカウント、コンテンツに重点を置く施策ですので個々のコンタクトではなくアカウントそのもの”に焦点を当てる「新しいマーケティング的思考法」が不可欠です 

加えていえば「アカウント専用のチームの編成」「新しいメッセージの作成」「ソフトウェアの導入」を達成し、リーダー陣の賛同を得るためには多くの時間618ヶ月ほどが必要でしょう。 

デマンドジェネレーションが短期で成功を収められる施策(=クイックウィン施策)である一方、ABMは長期的な目線で成功を目指さなければならないのです 

ABMではないモノ⑥:営業とマーケティングの「1度きり」の連携 

ABMでは、部門間で共通の目標に向けた密接かつ継続的なアライメント(連携)」も求められますABMは、単にアカウント内顧客“個人”が持つ一次的な興味関心の情報をすぐに営業にパスして対応してもらうだけの施策ではないのです。 

ABMでは、マーケティングがリードを獲得しナーチャリングしてから営業に渡すだけでなく、マーケティングと営業が協力してターゲットアカウントを設定する必要があります 

営業にとって「より少ないリードに対して営業を活用をするという、従来とは違った形での活動が求められるためABMに対して消極的かもしれません。しかし、ABMでは営業とマーケティングは同じ戦略の傘の元で動く必要があり、そうすることで初めて効果がでるものです。 

実際にMarketingProfs社によると、営業とマーケティングが連携したABM戦略を持つ企業は、マーケティング収益を208%増加させている4と述べられています。しかし、25%の営業部門とマーケティング部門は、従来の分断(サイロ)状態で運営を続けており、予算の達成が難しいなどの場合、さらに状況が悪化する可能性があるとのことです 

しかし、営業はABMに常に関わり続ける必要があります。営業の詳細なアカウント知識に基づいてマーケティングインサイトを検証し、「ターゲットアカウントの設定からペルソナ設定」「適切なメッセージングの模索」「ABMのオムニチャネル戦略への統合や計測最適化まですべてに関わるべきだということです 

この考え方については、Hitachi Vantara社のグローバルABMマネージャー Amy Hall氏も以下のように述べています。 

ABMの初めの段階からマーケティングと営業が連携することが必要です。なぜなら、最初から連携できていなければ、それは二度と実現することはないことを意味するからです。5

ABMではないモノ⑦:ただのフォーム付きコンテンツのプロモーション 

ABMでは、顧客との関係性の構築と、結びつきを深めるためのコンテンツを共有し続ける必要があります 

なぜ最も関連性が高く魅力的なコンテンツをオプトインフォームの裏側に隠すのでしょうか?BtoBの顧客はフォームへの入力を嫌います。6Sense社の最新の調査によるとWeb訪問者のうち平均して3.5%しかフォームに記入しない6という結果が得られ、Unbounce社による調査でも、中央値がわずか3%である7ことが報告されています。 

上記の統計データは、97%の人がフォーム回答に応じないことを示しています。では、なぜこのような従来型のマーケティング手法が未だに多く行われているのでしょうか 

主な理由は、マーケティング部門がリードを生成し、MQL数の目標値が達成できることを数字で証明できれば成果が見えやすいためです。 

しかし、ABMは関係構築に重点を置いています。尚且つコンテンツの共有は関係構築の貴重な促進剤です。ここに「壁」を設けてしまうと、関係構築がはるかに困難になるでしょう 

コンテンツの閲覧制限によって、エンゲージメントやインタラクション、特定のアカウントに合わせたコンテンツ作成が困難になるだけでなく、信頼を得ることも難しくなります。ABMにとって重要なのは、後者の関係ですので短期的な成果のみを追わないようにしましょう 

ABMではないモノ⑧:短期で収益を生み出すための即時的な施策 

ABMの根幹は、長期的なリードナーチャリングですそのため、ABMでは大きな成果を短期間で期待することはできませんABMには少なくとも618ヶ月のコミットメントが必要であり、取り組みを進めながらテストを繰り返し、アカウントやメッセージング、チャネルを最適化し続ける必要があります。 

そうして、結果がみえたらようやく次のステップに進めるのです。このテストと学習プロセス、結果が出るまで時間がかかる点については、組織の上層部から下層部までが賛同し、辛抱強くあることが求められるでしょう 

さらに「One to One」「One to Few」「One to Manyのなかから最適なABMアプローチを検討する必要があります。つまり「どういったアプローチがどのアカウントに最適かを考える必要があるのです。
 ABM(Account Based Marketing)の推進に必要な正しい考え方と前提条件とは?

最も時間とリソースを投入する価値があると考えられるアカウントには11のアプローチを適用すべきですが、これはスケジュールやリソースに応じて変わる場合もあるでしょう 

以上の考え方については、Digital Radish社のシニアストラテジスト Owen Steer氏も下記のように述べています。 

ABMは単なるマルチチャネルマーケティングではありません。それはベストプラクティスのマーケティングです。ただ複数のリードソースを使うことではありません。追い求めているアカウントを独自の市場として扱うことが重要です。8

ABMの真髄は「マインドセットを取り入れる」こと 

ABMは、一般的なマーケティング手法を使って一部のアカウントを絞り込むような単なるマーケティングバズワードではありません。ただし、より高い価値を持つアカウントをターゲティングするための全く新しいアプローチが必要です。 

その上では、わかりやすい指標を追うことをやめ、長期的なビジネスの結果の追及に焦点を移し抜本的で新しいマーケティング手法に取り組むための考え方・マインドセットを取り入れることが真髄といえます 

ABMは組織全体の戦略的ロードマップであり、理想をいえばコンテンツマーケティング、オムニチャネル戦略、顧客コミュニケーションや関係構築までを一括して適用する取り組みです 

そのためには、ターゲットアカウントをよく理解し、顧客とのコミュニケーションから得られる営業のインサイトをメッセージングに活用しましょう。営業と共にペルソナを設定し、ターゲットアカウントを選定することで、進捗状況について常に連携し合うのです。 

そうやって統合された戦略があってはじめて、ABMをする上でのベストプラクティスな指針を定義できるようになります結果的に“重要な顧客に付加価値を提供し、「顧客獲得」の概念を超えて、恩恵を得続けられるでしょう。 

 

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  1. Terminus ABM社:「2020 state of ABM report」https://terminus.com/2020stateofabm/   []
  2. B2B MARKETING社:「How and when to deploy technology for ABM」https://www.b2bmarketing.net/guides/how-and-when-to-deploy-technology-for-abm-b2b-marketing/ []
  3. MYCUSTOMER社:「Beware fake ABM: What is – and isn’t – account-based marketing? []
  4. MarketingProfs社:「B2B Marketing: Maximizing Personalization, Attribution, and CRM Potential」 https://www.linkedin.com/pulse/b2b-marketing-maximizing-personalization-attribution-crm-gopalaswami []
  5. strategicabm社:「6 Ways Sales and Marketing Alignment Helps Avoid ABM Failure []
  6. 6Sense社:Only 3% of Web Visitors Fill Out On-Site Forms. Here’s How the Other 97% Can Reveal Where Your Next Deals Are. https://6sense.com/blog/only-3-of-web-visitors-fill-out-on-site-forms-heres-how-the-other-97-can-reveal-where-your-next-deals-are/ []
  7. Unbounce社:「Getting More Leads Means Tweaking Your Traffic」https://unbounce.com/conversion-benchmark-report/#saas []
  8. Cognism社:「The Complete ABM Playbook」https://cdn2.hubspot.net/hubfs/2340453/The%20Complete%20ABM%20Playbook_Cognism.pdf []